●アメリカを歴史的サイクルとして理解する
米国安全保障企画の東秀敏と申します。本日は「米国史サイクル」というタイトル、サブタイトルとしては、歴史の逆襲と2020年代、そして来る危機という内容で講義を進めていきたいと思います。
本講義の問題提起は、以下の三つです。1つ目は、トランプ時代は米国史でどのような位置づけが可能か。2つ目は、米国史に特有な歴史のサイクルとは何か。そして3つ目は、歴史サイクルの中で、日米関係をいかに理解するべきか。
次に、要旨について説明します。停滞期という概念があります。まさにトランプ時代は、停滞期が始まる時期でした。しかし、転換期ではありませんでした。この違いに関しては、あとで詳しく説明します。そして、制度的サイクルと社会経済的サイクルが別々に循環していた時代でした。このサイクルの違いについても、後ほどご説明します。
また、2020年代は2つのサイクルが交差する10年でした。このサイクルの交差は、新しい時代を生み出す転換期を創出するものです。そして、日米関係は、常に2つのサイクルに振り回されてきました。その中で、常に日本は米国に反発するか、追従するかの2つの選択肢を取り続けてきたのです。
講義の概要は、以下のように構成されています。まず、トランプ時代の歴史的位置づけについてお話しします。次に、その制度サイクルと社会経済サイクルについて説明します。さらに、1920年代の停滞期の記憶に関しても説明します。その次に、2020年と1920年の共通点を再考します。そして、日米関係と米国史サイクルについて検討します。最後に結論を述べます。
●80年ごとの制度サイクルにおいてトランプ時代は停滞期
ではトランプ時代の歴史的位置づけについてお話しします。
トランプ時代は停滞期の始まりであって、転換期ではありません。停滞期の米国では、国内の対立が先鋭化します。また、トランプは症候であり、新時代への明確なアイデアも現在までに打ち出していません。つまり、ゴールを持たない戦略を取っていると、私は理解しています。これはカオスから生まれる秩序(Order out of Chaos)といわれ、ラシュモア...