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トランプ時代に直面した4つの危機とその兆候

米国史サイクル~歴史の逆襲と2020年代(3)2つの停滞期を再考する

東秀敏
米国安全保障企画研究員
情報・テキスト
アメリカに停滞期と転換期をもたらす2つのサイクル。1920年代のハーディング政権は停滞の時代であり、ルーズベルトの登場によって大きくアメリカの政治経済は転換していった。同様に、2010年代のアメリカも停滞期の只中にあった。そして、トランプ時代は米中新冷戦やドル基軸体制の動揺など、複数の危機とその兆候に直面している。(全4話中第3話)
≪全文≫

●ハーディング時代の停滞とルーズベルトによる転換


 ここでケーススタディとして、1920年代の停滞期を思い起こしてみましょう。

 1920年代は、工業化時代制度の停滞期でした。時代は常識を渇望しており、米国第一主義を掲げるウォレン・ハーディングが大統領に当選しました。このハーディングが出現した工業化時代制度の停滞期の背景には、行き過ぎた資本主義とそれに対抗する進歩主義の行き詰まりがありました。しかも第一次世界大戦の打撃も受けたために、アメリカ国民は疲弊しきっていました。それゆえ彼らは常識を渇望し、アメリカファーストを唱えたわけなのです。トランプ大統領のアメリカとまったく同じような状況でした。

 その結果、ポピュリズム、縁故主義、スキャンダル等にまみれ、本質的な解決策をまったく提示できない1920年代となりました。ハーディングはまさに停滞期大統領の象徴たる人物です。矛盾を利用して大統領に当選しましたが、結局、解決策をうまく提示できませんでした。ハーディング以降の3人の共和党出身大統領の時代は、かなり停滞した10年間となりました。結局、1933年に発足したフランクリン・ルーズベルト政権は、ニューディールと孤立主義で新たな社会経済サイクルを開始し、末期の1945年にはテクノクラシー時代サイクルを生み出したのです。

 フランクリン・ルーズベルト時代は、転換期でした。彼は、きちんと国内統合の論理を提示し、しかも新しい制度まで生み出すことができた転換期大統領なのです。しかも制度だけではなく、ニューディールによって新しい社会経済サイクルを生み出しました。この意味で、彼は2つのサイクルを一人で生み出した、米国史におけるかなりの逸材なのです。


●史上初めて2つのサイクルの停滞期が重なる2020年代の特異性


 次に2020年代の停滞期を再考してみましょう。

 2020年代の特異性は、制度的サイクルと社会経済的サイクルの変遷が、ほぼ同時に起こることにあります。これはアメリカの歴史の中で初めての危機です。

 制度サイクルに関していえば、今はテクノクラシーですが、これが2025年頃に終わるといわれています。制度サイクルの転換期には戦争が起こるはずですが、これは何の戦争なのでしょうか。9.11以降もくすぶり続ける対テロ戦を、戦争とカウントすることもできるでしょう。現在起こっている米中対立も、戦争と見なすことができるかもしれません。しかし歴史的に制度を転換してきた戦争は、大きな犠牲を伴うものがほとんどです。対テロ戦は犠牲という観点からいえば小規模なので、やはり大国間戦争が起こるのではないかといわれています。

 そして、米国第一主義が永続するようなものなのかという点も不透明です。制度サイクルの将来がまったく見えない状況で、もし次の第四次制度サイクルが形成されれば、2025年から2105年までの約80年間継続するだろうといわれています。

 次に社会経済サイクルです。今の時代はレーガン・サイクルに当たります。これが2030年頃まで続くといわれています。次に何が出現してくるのでしょうか。実は社会経済サイクルに関しては、「フロンティア」という一つの見方があります。資本主義は常に新しいフロンティアを欲しているのです。フロンティアという観点から見ると、まず米国中西部は未開拓のフロンティアといえます。次にサイバー空間があります。サイバー空間はもともと米国がつくり上げたのですが、現在では中国やロシアが跋扈しています。これらを一掃して、また米国主導のサイバー空間をつくろうとしています。そして宇宙です。トランプ政権は、宇宙の開拓に非常に力を入れています。スペースXの支援、宇宙軍の創設、そして火星に人間を送り込むなど、さまざまな計画が立ち上げられており、やはり新フロンティアの主眼は宇宙に向けられています。こう考えると、新しい経済サイクルが、当然、登場してもおかしくない状況にあります。


●トランプ時代には4つほど危機とその兆候があった


 しかし同時に、トランプ時代には4つほど危機とその兆候があります。

 まず米中新冷戦です。そして、ドル基軸体制の揺らぎがあります。ビットコインなどの台頭により、ドルへの信頼がだんだんと揺らいできています。そしてテクノクラシーとの抗争です。テクノクラシーとの抗争の最たるものが、私も以前に本に書きましたが、ロシアゲートの疑惑です。これは、トランプと、いわゆるディープステートといわれる諜報機関などの軍産複合体の勢力、エスタブリッシュメントとの抗争が現在も展開されています。

 最後に、これは危機ではなく新たな時代の兆候なのですが、民間の宇宙進出が挙げられます。先ほども挙げた、スペースXの目ま...
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