●ハーディング時代の停滞とルーズベルトによる転換
ここでケーススタディとして、1920年代の停滞期を思い起こしてみましょう。
1920年代は、工業化時代制度の停滞期でした。時代は常識を渇望しており、米国第一主義を掲げるウォレン・ハーディングが大統領に当選しました。このハーディングが出現した工業化時代制度の停滞期の背景には、行き過ぎた資本主義とそれに対抗する進歩主義の行き詰まりがありました。しかも第一次世界大戦の打撃も受けたために、アメリカ国民は疲弊しきっていました。それゆえ彼らは常識を渇望し、アメリカファーストを唱えたわけなのです。トランプ大統領のアメリカとまったく同じような状況でした。
その結果、ポピュリズム、縁故主義、スキャンダル等にまみれ、本質的な解決策をまったく提示できない1920年代となりました。ハーディングはまさに停滞期大統領の象徴たる人物です。矛盾を利用して大統領に当選しましたが、結局、解決策をうまく提示できませんでした。ハーディング以降の3人の共和党出身大統領の時代は、かなり停滞した10年間となりました。結局、1933年に発足したフランクリン・ルーズベルト政権は、ニューディールと孤立主義で新たな社会経済サイクルを開始し、末期の1945年にはテクノクラシー時代サイクルを生み出したのです。
フランクリン・ルーズベルト時代は、転換期でした。彼は、きちんと国内統合の論理を提示し、しかも新しい制度まで生み出すことができた転換期大統領なのです。しかも制度だけではなく、ニューディールによって新しい社会経済サイクルを生み出しました。この意味で、彼は2つのサイクルを一人で生み出した、米国史におけるかなりの逸材なのです。
●史上初めて2つのサイクルの停滞期が重なる2020年代の特異性
次に2020年代の停滞期を再考してみましょう。
2020年代の特異性は、制度的サイクルと社会経済的サイクルの変遷が、ほぼ同時に起こることにあります。これはアメリカの歴史の中で初めての危機です。
制度サイクルに関していえば、今はテクノクラシーですが、これが2025年頃に終わるといわれています。制度サイクルの転換期には戦争が起こるはずですが、これは何の戦争なのでしょうか。9.11以降もくすぶり続ける対テロ戦...