モンゴル帝国の世界史
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モンゴル帝国の急拡大の理由は「イスラム商人」と「神託」
モンゴル帝国の世界史(3)イスラム教徒の存在と「神託」
歴史と社会
宮脇淳子(公益財団法人東洋文庫研究員)
モンゴル帝国が世界帝国として一気に拡大した背景として重要なのは、イスラム教徒の存在である。東西交易の商業を担っていた彼らは、そのために必要な情報を持っていた。さらに影響が大きかったのが、チンギス・ハーンに降りた「神託」であった。モンゴル全体に強い力を生み出し、西へ西へと版図を拡大した背景に迫る。(全7話中3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分56秒
収録日:2022年10月5日
追加日:2023年1月14日
≪全文≫

●イスラム教徒と組んで資金と情報を得たモンゴル人


―― 次に、そのようにできてきたモンゴル帝国が、なぜ世界帝国としてあれほど版図を広げていったのかという点です。

宮脇 モンゴルはチンギス・ハーンについても資料(書いたもの)がないほどで、彼は字が読めなかったらしいのです。耳で聞いて、いろいろな言葉を理解したようですが。

 そして、次のような逸話があります。遊牧民の中にはもう少し文化の高い人たちがいました。チンギス・ハーンは一番田舎から出てきたのですが、今のモンゴル国の中央のウランバートルあたりには、西と交流をしていて、もう少し文化程度の高い、文字を持った遊牧民がいたわけです。

 そこを攻めて、逃げている大臣を捕まえたら、判子を持っていた。チンギス・ハーンがそれを見て、「それは何だ」と聞いた。そうすると、その大臣が「これは文字です」「君主が、自分が命令を出したということを証明するために、これを文字で書いたものに押すのです」などと説明した。それが実は古いモンゴル文字で、「それは便利だ、それを使おう」とチンギス・ハーンが決めて、子どもたちに勉強しろと言った。自分は歳だから勉強しなかったのです。

 その文字は実は、地中海のシリアに始まるアラム文字(イエス・キリストが使ったらしいアラム文字)が、今のアラビア文字と同じ元から中央アジアに来てソグド文字になり、古いウイグル帝国の文字になった。だから、アラビア文字のように右から書いていた文字だったのです。

 ところが、ウイグル帝国はシナとの関係が強かったため漢字も使い、漢字交じりで書くものができた。漢字は当時、絶対に横に書かず、縦にしか書かなかった。それで、文字を縦にしてしまったわけです。

―― なるほど。

宮脇 それでモンゴル文字は縦に書くのです。でも、アルファベットです。西から来ているシリア文字なのです。それを便利だということで、13世紀にモンゴル文字にした。

 ということで、チンギス・ハーンの時代にやっと文字が来る。西の文化がモンゴルに入ったのです。ですから今、中国に言いたいのですが、モンゴル人は中国人とは違います。そもそも地中海文明がドッと東にやってきた、その端がモンゴルなのです。

―― 確かに文字が違うという点は典型的ですね。あれほど近いのに漢字が入っていない、と。

宮脇 そうなのです。それで、シルク...

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