「政治とカネ」の裏の意味-政治資金不記載問題
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
政治資金を裏金に?…マネー・ロンダリングの逆をなぜやるか
「政治とカネ」の裏の意味-政治資金不記載問題
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
2023年の年末に急浮上した自民党議員の裏金問題。だが、その発端となっている「政治資金不記載問題」は昔から続く政治とカネの大きな問題の一部でもあります。政治献金を明瞭化するための政治資金規正法がつくられ、さまざまな改正もなされてきたにもかかわらず、政治資金パーティー券収入のキックバックをめぐる裏金問題はなぜ起こるのか。その背景と実状を理解しておかなければ、問題の本質を理解し、解決の道を求めることはできない。そうなれば、議論や追及も「発散」するばかりになりかねない。果たしてどのような構造や課題が裏側にはあるのか。緊急講義で曽根泰教氏に解説いただく。
時間:13分06秒
収録日:2023年12月21日
追加日:2023年12月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●裏金問題の本質は「マネー・ロンダリング」の逆?


 今日は政治と金、裏の意味ということで、政治資金不記載問題をお話しいたします。政治的な話題になっていて、皆さんは興味があると思いますが、疑問点も山ほどあります。

 例えば、なぜ裏金にしたのか、そのお金はいったい何に使ったのか、政治資金における政党と派閥というのはどういう違いがあるのか、あるいは自民党の政治改革大綱の話は、いろんな政治家が最近しています。いったい、何をしてきて、何ができなかったのか。

 現状では全体像が十分に解明されていませんが、「いったいどうなっているのか」「これからどうしたらいいのか」「将来構想、将来の絵は描けるのか」というお話をしたいと思います。

 何が問題かと言いますと、派閥がパーティーを開いたとき、各議員が集めたお金を派閥に届けるわけですが、それが還流しているケースがある。あるいは不記載です。つまり派閥のほうにも記載がない、所属議員のほうにも記載がないわけです。そうすると、そのお金がすべて裏金になっているというケース。あるいは所属議員がお金を集めたけれども、それを自分のところでプールして中抜きをしているというようなケースです。

 あるいは参議院選挙で、安倍派の中から出てきた話ですが、参議院議員で次の選挙に出る人たちが、それをパーティー費用としてではなく、自分の選挙費用に使ってしまうことです。つまり、一、二の三で、裏金化してしまった。

 このような具体例が出てきて、これはいったいどのくらい数があるのか、どのくらいの広がりがあるのか、まだわからないところがあります。

 この裏金問題ということをお話しするときに、通常、我々は「マネー・ロンダリング」ということを言います。マネー・ロンダリングというのは、裏金を表金にして堂々とお金を使えるようにすることです。

 ところが、今回はその逆です。表の金を不記載にすることによって裏金化し、つまり表面から消してしまったのです。

 では、なぜ裏金にしたのか。つまり、記載できない支出があるのか、あるいは不都合な点がたくさんあるのか、非常に不明部分が多いわけです。

 現金にすることによって便利になるのでしょ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦