戦前日本の「未完のファシズム」と現代
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知られざる皇道派の思想…その“密教”と“顕教”とは
戦前日本の『未完のファシズム』と現代(6)皇道派と統制派の対立
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
戦前日本の運命を考える上で、皇道派と統制派の対立は重要である。特に強国の経済力を目の当たりにした皇道派のビジョンが失敗に終わったことは、その後の日本の運命を決めることになる。(2020年2月26日開催・日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「戦前日本の『未完のファシズム』と現代」より9話中6話)
時間:11分36秒
収録日:2020年2月26日
追加日:2020年7月21日
≪全文≫

●皇道派の思想は天皇を崇める精神主義である


 陸軍の話に少しだけ補足をします。これは『未完のファシズム』という本の中の一つの本題なのですが、第一次世界大戦を知れば知るほど、その中心人物である軍人が、二・二六事件を起こしていたことがわかります。彼らが、二・二六事件を起こす皇道派の核心をなす将軍たちになるのです。

 例えば、荒木貞夫や小畑敏四郎です。さらには、真崎甚三郎が二・二六事件に大きな役割を持ちます。皇道派とは、「天皇の道」と書くので、天皇陛下を最上の存在として考え、天皇のための軍隊を編成しようとする立場です。こうした皇道派の将軍たちは、天皇陛下のために精神を鍛えて訓練をすれば、強い陸軍ができると考えました。


●経済力を重要視する統制派が皇道派を強く批判


 こうした発想は、日露戦争や第一次世界大戦後の時代を考えれば、「何を言っているんだ。そんなことで勝てるような時代は終わったぞ」と言われるでしょう。実際にいかに装備を近代化して、数を持つかということに尽きているではないかと批判されました。こうした批判は、田中義一から永田鉄山の流れに至る、陸軍における統制派の考え方です。

 彼らからすれば、やはり陸軍は装備がきちんとしていなくてはなりません。そして、後に「統制派」と呼ばれる永田らのグループは、こう考えました。それは陸軍だけでは実現できない。日本の経済成長を図るような、内閣をはじめとした機能と陸軍が共同して工業生産力を高め、いざというときは、民間企業で多くの鉄砲の弾や軍のための車両が造れるような生産体制が求められます。日本は社会主義国ではないので、普段は民間の需要の中でさまざまなものをつくっています。そうした生産ラインを、いざと言うときに戦車や弾に変更できるような工場を、民需の中で維持できる国家を、軍と内閣が共同でデザインしていくことを提唱したのです。統制派は、こうして国家総動員体制をつくることを目指しました。


●統制派の思想は日本では実現不可能だった


 ところが、この統制派の思想は、日本では実現できないと見なされました。なぜなら国力に開きがありすぎるので本気になってやろうと思っても、アメリカやソ連に勝ち目はないだろうと考えられたからです。そう見限っていたのは、実は皇道派でした。

 皇道派は、「精神力で勝てる」などと言うので、よくバカにされま...

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