戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「昭和の悲劇」の教訓とは…従来の昭和史理解の大きな誤り
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(6)二つの教訓
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
皇道派は中国との戦争の回避を主張したが、統制派こそが侵略を推進し、日本を破滅に導いた。だが総力戦体制は日本のみの考え方ではなかった。グローバリズムの中でも自国の国防については考えをひそかに持っていた。これが日本に足りなかった点であり、今日なお教訓にすべき点である。(全7話中第6話)
時間:12分42秒
収録日:2018年12月25日
追加日:2022年9月16日
≪全文≫

●皇道派は中国との戦争を回避したかった


 皇道派の将校たちは、眞崎甚三郎もそう、小畑敏四郎もそう、樋口季一郎や辰巳栄一といった開明派はもちろんのこと、中国と事を構えたら泥沼の戦争になってしまい、いずれ米英と敵対することになり、最後の最後に必ず共産主義のソ連が乗り出してきて、日本は虚を突かれる。対米戦でボロボロになった国力をいいことにソ連が侵攻して、日本は赤化されると考えました。

 それを最も恐れたのが皇道派です。統制派は逆にソ連とはいい関係を築けると考えました。むしろ、中国を日本の実質支配下に置くことこそが日本の唯一の選択肢であり、そうしたら米英相手の戦争も十分に可能になるということです。いわゆる東亜共同体とか後の大東亜共栄圏という発想で、総力戦体制論と全く軌を一にしているわけです。

 ですから、一番危険な思想は統制派の思想だったということです。昭和日本を破滅に追い込んだのは統制派的な発想で、米中をともに敵に回しても日本は十分に対抗できると踏んで、そして共産主義、ソビエト、あるいは伝統的なロシアが日本の安全保障にいかに大きな潜在的脅威かということを知ってか知らずか、国策の重要要素として見なさないような方向を取ろうとしたのが統制派なのです。

 ですから、従来の統制派・皇道派理解、昭和史の理解がいかにねじ曲がっていたかということです。これが一つまず、今この問題を論じるときに大事な視点です。


●グローバリズムの中でも自国のことを考えていた列強


 二つ目の大事な視点としての意味は、当時の総力戦体制や新しい高度国防国家という考えは、何も日本に限ったことではない問題意識だということです。どこの国もそうではないかと思っていたのです。

 1920年代の世界は、ある種、グローバリゼーションが進んで、経済も金解禁などが行われて、非常に国境のない経済が進んでいくかのように見えていました。ですから、これからはそういう時代で軍縮と国際連盟を中心に日本の前途が構想されなければならず、軍隊は極力減らすべきだという軍縮の議論に簡単に日本のインテリたち、政治家たちは乗っかるわけです。流行の理論ですが、これが1920年代のグローバリズムです。

 欧米諸国がその流れに沿って政治経済の動きを進めていったことは間違いありません。しかし、彼らの中にあったのは、このままで歴史は一直線に展開す...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(1)シラス論と日本の政治
独裁ができない戦前日本…大日本帝国憲法とシラスの論理
片山杜秀
家康の人間成長~戦略性をいかに培ったか(1)今川「人質」時代と今川義元の思惑
徳川家康の秘密…「辛抱」イメージとは異なる自由奔放な人質時代
小和田哲男
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(1)危機の台湾への密航
「国共内戦」危機の台湾…根本博の密航と涙で迎えた中国人将軍
門田隆将
敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史(1)厚木飛行場に降り立った占領者
敗戦した日本の武装解除はなぜ無血だったか…その背景とは
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
「満洲」から考える日本とアジア(4)蒙古襲来と清朝建国
実は元寇はモンゴル人ではなかった?満洲をめぐる民族興亡史と「漢族」との関係…蒙古襲来から清朝建国まで
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(8)『オデュッセイア』の世界的影響
オデュッセイアが物語のフォーマット?…アラビアンナイトから百合若物語、ひまわりまで
松村一男
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫
テロメアから考える「アンチエイジング」(1)老化とテロメアの関係
テロメアの長さが「がんリスク」と「老化」のカギを握る
堀江重郎
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎