戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
永田鉄山の「政界・経済界」工作…高度国防国家と統制経済
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(3)軍縮をめぐる対立
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
陸海軍における派閥を生み出した要因の一つに軍縮がある。海軍においては艦隊派が軍縮に反対し、条約派と対立した。陸軍の統制派は条約派と共通性もあるが、永田鉄山の例に見られるように、経済界や政界に工作を行ないつつ、統制経済を国策として確立していくこととなる。(全7話中第3話)
時間:8分22秒
収録日:2018年12月25日
追加日:2022年8月26日
≪全文≫

●軍縮と軍の派閥…「条約派と艦隊派」「統制派と皇道派」


 前回お話しした時代背景から、具体的に統制派、皇道派の話に入ります。前回お話しした、大正時代の時代背景の中で、特に軍縮の問題が大きかったと思います。

 軍縮といえば、大正時代の日本は、なんといっても海軍軍縮が非常に取り沙汰されますが、ワシントン会議で日本海軍は大幅な軍縮を迫られるわけです。これは1921年ですから、大正10年です。ロンドン軍縮は昭和5(1930)年ですが、海軍軍縮ということで日本の政治外交にとって大きな論争を生み出すわけです。

 ですが、陸軍も軍縮を強いられています。有名な宇垣軍縮があります。宇垣一成陸軍大臣の下で、陸軍を一挙に縮減する、削減するという、行政改革でいえばものすごい規模の行革を強いられて、若い将校たちはこのまま陸軍に勤めていてもしょうがない、食い扶持がなくなるといって、早めに退官して街で商売をやった方がいいと、若い青年士官たちが恐慌をきたすほどの大規模な軍縮だったわけです。もう一つは山梨軍縮という、山梨半造陸軍大臣の下でやはり似たような規模で軍縮をやっています。

 これは時代の風潮に流されたといったら一言で終わりですが、特にそれが政治プロセスに大きな影響を与えたことが、特に軍の反発を引き起こしました。

 最初に軍の派閥を形成するのは、陸軍よりも海軍の方が早いのです。海軍はワシントン会議で軍縮を強いられます。英米の要求は、ワシントン会議だと5:5:3の比率で、ロンドンでも同じような比率ですが、それをのまされたことで不当として、日本は日本の主張をつらぬくべきだ、対米6割では国は守れないということを強硬に打ち出した、海軍の派閥抗争の一派、艦隊派ができました。それに対して、条約を守って軍縮にいそしむべきだという、国際協調を中心とした条約派があって、この条約派と艦隊派は、陸軍の統制派と皇道派に相対応する構図を持つのです。

 昭和史研究者は、ほとんどこのような陸海軍を総合した視点がありません。それはなぜかというと、世界秩序が陸海軍両方に要求していた適応力が同じ方向を向いていたからで、本質的に同じ意味を持ったのです。

 後でおいおい説明しますが、陸軍の、よくいわれる統制派は、経済政策の統制経済を全面に掲げたから「統制派」という名前が付いたようですが、そこだけではありません。もっと大きな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦