豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る
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錚々たる大名たちを指南…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
黒田基樹(駿河台大学法学部教授/日本史学博士)
豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはかなりの齟齬がある。今回、新たに分かってきたことと照らし合わせると、その内容とともに彼らの実像とは乖離していることが判明した。2026年NHK大河ドラマの時代考証に生かされた黒田氏の研究結果をもとに、史実としての「豊臣兄弟」に迫っていく。(全10話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:13分40秒
収録日:2025年10月20日
追加日:2025年12月18日
≪全文≫

●豊臣? 羽柴?…「氏」と「苗字」はどう違うのか


―― 皆さま、こんにちは。本日は黒田基樹先生に「豊臣兄弟(羽柴兄弟)の実像に迫る」ということで、お話を伺ってまいりたいと思います。黒田先生、どうぞよろしくお願いいたします。

黒田 よろしくお願いします。

―― 豊臣兄弟(羽柴兄弟)ということで、当然、秀吉と秀長ということになってきます。この二人、特に秀吉については、1年で1回もドラマにならないことはないというぐらい、いろいろな物語が流布されています。ところが今回、先生のご本を読んで驚いたのですが、実は案外実像が分かっていなかったということですか。

黒田 そうですね。(彼らについては)江戸時代に作られた物語が流布していて、それをもとに戦後に歴史小説が書かれたり、その歴史小説をもとにドラマが作られていたりという流れになります。実際に当時の史料を元にきちんと検討するのは、比較的最近の状況なのです。

―― そうなのですか。

黒田 ですから、まだまだ全然実態は分かっていないというのが現状です。

―― なるほど。今、講義の冒頭にも、豊臣兄弟(羽柴兄弟)と、二つの名前で紹介しましたけれど、ここを最初に整理しておいたほうがいいと思います。羽柴と豊臣は、どう違うのですか。

黒田 羽柴は「苗字」、豊臣は「氏(うじ)」です。

―― 「氏」というと、どういうイメージですか。

黒田 氏というのは、藤原や源、平のように、天皇から古代に豪族ごとに与えられた、苗字といえば苗字ですが、名前ですね。

―― そうすると、例えば徳川の場合は、徳川が苗字になるわけですか。

黒田 徳川が苗字で、氏は源です。織田は、苗字が織田で、氏は平。

―― なるほど。

黒田 一般的には「源平藤橘」という形でいわれるものが有名ですが、それ以外にも氏はあります。中世に入って氏族社会の中で「家」が成立するようになると、同じ「氏」の家が分立していく。そこで、区別をするための屋号のような呼び方が始まるのですが、それが代々受け継がれていく。その結果、それが「苗字」として認識されるようになり、家の名前になっていくということです。

―― 例えば藤原氏の場合、近衛や九条のような名前もありますが、あの近衛や九条というのが苗字ということになるのでしょうか。

黒田 そうです。だから、武家であれば、あとは小山(おやま)や結城な...

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