宗教で読み解く「世界の文明」
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ナショナリズムというやり方で出来上がったキリスト教文明
宗教で読み解く「世界の文明」(4)キリスト教
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
キリスト教は、聖書およびGodとJesusの関係によって説明される。聖書は法律ではないため、人々が世俗の法に従うことを許した。その結果、主権国家やナショナリズムの成立を促し、ヨーロッパ・キリスト教文明が確立した。(2019年11月12日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「宗教で読み解く世界」より、全9話中第4話)
時間:11分16秒
収録日:2019年11月12日
追加日:2020年5月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●キリスト教の立場


 キリスト教には、GodとJesusがいます。GodとJesusの関係は、少し複雑なのですが、まずGodが父であり、Jesusが子どもです。しかし、旧約聖書にはGodに子どもがいるとはひと言も書いていません。しょうがないので、新約聖書というものをこしらえて、そこにJesus、つまりナザレのイエスのことを書きました。そして、神の子どもだと書いたのです。旧約聖書と新約聖書の2冊を合わせて聖書だというのが、キリスト教の立場です。

 ですから、なかなかややこしいのですが、イエスが神の子どもだということは、キリスト教にとって証明済みの事実で、済んだことになっています。新約聖書に福音というものがあり、ここには、イエスの言葉があります。それに、みんな従いなさいという教えです。


●社会秩序の維持・安定のため、ローマ帝国とキリスト教が協働


 さて、コーランはイスラム法ですが、新約聖書に書いてあるのは、福音です。福音書は4冊あるのですが、イエスが「みんなを救いますよ」ということが書いてあります。

 それでは新約聖書は、法律なのでしょうか。実は、法律ではありません。それでは、キリスト教徒はどういう法律に従うのでしょうか。これは聖書に書いておらず、決まっていません。決まっていないので、適当な法律に従います。

 福音書の次に、「ローマ人への手紙」というものがあります。パウロが書いたのですが、そこには「さしあたりローマの法律に従いなさい」と書いてあります。なぜなら、ローマ帝国にいるのですから、もしローマの帝国の法律に従わなかったら、反政府運動ということになります。たちまち弾圧されて、ライオンに食べさせられたりして、駄目になってしまいます。ですから、おとなしくローマの法律に従い、ローマ帝国の政府に協力するという態度なのです。これにより、キリスト教徒の人数は増えました。

 おとなしいキリスト教徒が、「社会秩序の維持・安定に協力します」といって出てきたら、ガタガタになりかかっていたローマ帝国にとっては、大変都合が良いのです。そこでキリスト教を公認して、「キリスト教は社会秩序の維持・安定に協力しなさい。その代わり特権をあげるからね」と言いました。こうしてローマ帝国とキリスト教は一緒になり、安定しました。これは3~4世紀の話です。

 さて、これでうまくいったかというと、ローマ帝国は結局、滅ん...

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