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ヒンドゥー教のカースト制度への対抗の1つが仏教の真理

宗教で読み解く「世界の文明」(5)ヒンドゥー教と仏教

橋爪大三郎
社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授
概要・テキスト
ヒンドゥー教におけるカースト制は、頂点にいるバラモンのみが宇宙の真理に到達できるという考え方からきている。インド文明はこうした発想を基礎として成立しているが、ヒンドゥー教の考え方・やり方に反対して起こったムーブメントの1つが仏教である。(2019年11月12日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「宗教で読み解く世界」より、全9話中第5話)
時間:12:59
収録日:2019/11/12
追加日:2020/05/24
タグ:
≪全文≫

●インドにおけるヒンドゥー文明


 次はインドで、インドはカースト制です。詳細は割愛しますが、カースト制は、支配カーストとそうではないカーストに分かれます。バラモンがトップです。クシャトリアが2番目で、ヴァイシャ、スードラ(=シュードラ)と続き、その下にアウトカーストであるダリットがあります。4つ、ないし5つのカテゴリーがあり、このなかもさらに細かく分かれています。

 なぜこのような差別(身分制度)があるのでしょうか。これはインドの考え方なのですが、私の理解によると、インドには神が大勢います。そのため、実は神よりも真理というものを重んじます。この宇宙には真理がある。これは素晴らしいもので、人間はこの真理を理解し、体得し、真理と合体して、素晴らしい存在になることができるという考え方があり、これがインド人の根本的な考え方です。バラモン教やヒンドゥー教もそうですし、仏教もこういう考え方です。

 さて、この真理にアクセスすることは簡単ではありませんが、たまにアクセスできる人がいます。そういう人を「聖者」といいます。聖者が出てきて真理を体現し、真理そのものになって、素晴らしいことが起こります。そして、みんな聞きにいきます。「聖者さん、真理って、どんなものですか? 真理を体得すると、どんな素晴らしいことがありますか?」と。それに対して、聖者の答えは、「真理? 素晴らしい。でも、言葉では言えない」というものです。仏教にはそのように書いてあるのですが、ヒンドゥー教にもそう書いてあり、インド人はみんな、そう言うわけです。


●ヒンドゥー教における真理は「言葉で言えない」


 この「言葉で言えない」というところに注意してください。キリスト教イスラム教一神教だったら、真理は言葉で言えますか。

 言えます。神が言葉で言うからです。神の言葉はそのまま真理です。真理を書いた本があります。それでは真理にアクセスするにはどうしたらいいか。本を読めばいいのです。だからみんな、本を読みます。聖書を読み、コーランを読みます。そして暗記し、それを生かし、生きていきます。これが一神教のもとでの人間の正しいやり方です。本があるとこういうことになります。

 中国では、どうでしょうか。正しい規準の本があります。これを読んで体現し、本に書いてあるように行動することが、人間として、一番価値があるこ...
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