●イスラム教は一神教の特性を体現している
まず、一神教についてお話しします。一神教とは、神さまが1人いるという考え方です。どうして1人なのかについては時間の関係で省略しますが、一神教には3つあります。一番古いのがユダヤ教です。それから、キリスト教とイスラム教です。ユダヤ教についても、時間がないので話しません。キリスト教とイスラム教だと、イスラム教のほうが分かりやすい。そこで、イスラム教はどのようなものか、お話しします。
イスラム教には、アッラーという神がいます。これは名前ではなく、アラビア語で神という意味です。その下に、預言者ムハンマドがいます。アッラーがムハンマドに、啓示というのですが、要するにささやきかけるのです。言葉を教えてくれるのです。これは「Qur'an」と書いてコーランと読みます。コーランが法律になり、みんながそれに従います。これが、イスラム教徒、つまりムスリムの皆さんです。
神が1人であり、預言者が1人、そしてコーランも1冊です。そのため、イスラム共同体も1つだと考えられています。このように、イスラム教は「1」であることをとても重視します。一神教なので、こうでなくてはなりません。この「1」ということを、タウヒードと言います。キリスト教は三位一体ですよね。それに比べると、イスラム教は一神教の原則に則って忠実ですから、非常にストレートで分かりやすいのです。
●コーランには何が書いてあるのか
イスラム法学の本を読んでみると、みんな、「どうしてムスリムにならなければならないのか」ということが書いてあります。重要なのは、まずアッラーです。アッラーとは世界を創った神さまです。ですから、山も川も地球も月も星も太陽も全部、アッラーが創ったもので、アッラーのものです。これを承認しなくてはなりません。
アッラーは、本当にいるのだろうかという疑問が生まれます。しかし、イスラム法学の本には、「アッラーは何者か。それはアッラーが知っている」としか書いてありません。神のことは人間にはよく分からないのです。
次にアッラーが預言者ムハンマドを選びました。ムハンマドという人は、歴史的に実在した人物です。この人が預言者です。ムハンマドは何者なのでしょうか。それはアッラーが知っています。ムハンマド自身も知っています。仮に神も男性だと考えると、成人男性が2人、知っているということです。当時のアラビアの慣習法では、成人男性2人が証言すると、それは事実です。よって、ムハンマドが神の唯一の預言者であるという証明は終わりなのです。
次に、コーランです。コーランは、ムハンマドの啓示した神の言葉です。このことはムハンマドが保証しています。これは神の命令なので、みんな、それに従わなくてはいけません。そうすると、みんな、ムスリムにならなくてはなりません。こうしたロジックによって、世界中の人はムスリムになるべきであるということです。
コーランには何が書いてあるのでしょうか。「こう考え、こう行動しろ」ということがたくさん書かれているのですが、行動がとても大事です。これが、イスラム法になります。「シャリーア」というのですが、イスラム法のことです。聖典とは、そのまま神の命令ですから、法律になってしまうのです。そのため、イスラム教にはイスラム法、つまり宗教法というものがあります。
ユダヤ教も、実はこれにそっくりです。アッラーをヤハウェに換えて、ムハンマドをモーセに換えて、コーランを旧約聖書に換えれば、そっくりそのままです。ただ、ユダヤ教の場合はユダヤ人しか信じませんが、イスラム教は世界中の人が信じなければならないとされており、ここだけ少し違います。
●イスラム法の立法者は神である
確認しておきます。イスラム教による法律があります。この法律の立法者は誰でしょうか。
ムハンマド? ムハンマドは人間なので違います。
アッラー? その通り、神が立法者です。
今、私はマイクで話しており、声が皆さんに届いていますよね。ムハンマドは、このマイクやアンプのようなものです。マイクやアンプが自分の考えで、何かを付け加えたり、差し引いたりしてはダメです。ですから、ムハンマドは発話者であるアッラーの言う通りに記録しているという点が重要です。
ムハンマドは、何も付け加えてはいません。彼は啓示を受けるとき、意識を失って倒れてしまいました。それで口から泡を吹いて、何かうわ言を口走るようになっていました。それを筆記していきました。ということで、神が立法者です。
イスラム法というのは、世界にいくつありますか? 1つです。たった1つ。それでは例えば、「私はイラン人です。コーランのほかにこういう法律を作ります」とか、「私はカザフ人です。コーランのほかに、こう...