宗教で読み解く「世界の文明」
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イスラム教には民主主義や憲法といった考え方がない
宗教で読み解く「世界の文明」(3)一神教とイスラム教
哲学と生き方
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
一神教とは何か。もっとも理解しやすいのはイスラム教である。イスラム教の聖典であるコーランには、ムハンマドが啓示した神の言葉が書いてある。これにより、人々が従うべき法が示されることになる。(2019年11月12日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「宗教で読み解く世界」より、全9話中第3話)
時間:11分16秒
収録日:2019年11月12日
追加日:2020年5月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●イスラム教は一神教の特性を体現している


 まず、一神教についてお話しします。一神教とは、神さまが1人いるという考え方です。どうして1人なのかについては時間の関係で省略しますが、一神教には3つあります。一番古いのがユダヤ教です。それから、キリスト教とイスラム教です。ユダヤ教についても、時間がないので話しません。キリスト教とイスラム教だと、イスラム教のほうが分かりやすい。そこで、イスラム教はどのようなものか、お話しします。

 イスラム教には、アッラーという神がいます。これは名前ではなく、アラビア語で神という意味です。その下に、預言者ムハンマドがいます。アッラーがムハンマドに、啓示というのですが、要するにささやきかけるのです。言葉を教えてくれるのです。これは「Qur'an」と書いてコーランと読みます。コーランが法律になり、みんながそれに従います。これが、イスラム教徒、つまりムスリムの皆さんです。

 神が1人であり、預言者が1人、そしてコーランも1冊です。そのため、イスラム共同体も1つだと考えられています。このように、イスラム教は「1」であることをとても重視します。一神教なので、こうでなくてはなりません。この「1」ということを、タウヒードと言います。キリスト教は三位一体ですよね。それに比べると、イスラム教は一神教の原則に則って忠実ですから、非常にストレートで分かりやすいのです。


●コーランには何が書いてあるのか


 イスラム法学の本を読んでみると、みんな、「どうしてムスリムにならなければならないのか」ということが書いてあります。重要なのは、まずアッラーです。アッラーとは世界を創った神さまです。ですから、山も川も地球も月も星も太陽も全部、アッラーが創ったもので、アッラーのものです。これを承認しなくてはなりません。

 アッラーは、本当にいるのだろうかという疑問が生まれます。しかし、イスラム法学の本には、「アッラーは何者か。それはアッラーが知っている」としか書いてありません。神のことは人間にはよく分からないのです。

 次にアッラーが預言者ムハンマドを選びました。ムハンマドという人は、歴史的に実在した人物です。この人が預言者です。ムハンマドは何者なのでしょうか。それはアッラーが知っています。ムハンマド自身も知っています。仮に神も男性だと考えると、成人男性が2人、知っている...

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