ムハンマドを知る
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
逸話が教えるムハンマドの寛大さ、おおらかさ
ムハンマドを知る(3)人間の卑小さを見抜いた偉大さ
哲学と生き方
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ムハンマドの性質は、宗教者性と政治家性を兼ね備えたものだったと、歴史学者・山内昌之氏は解釈する。今回は、「ハディース」の伝承により、些細な罪や卑小な人物への遇し方から浮かぶムハンマドの実像に迫る。(全6話中第3話目)
時間:6分41秒
収録日:2015年5月28日
追加日:2015年6月25日
≪全文≫

●共に礼拝して過ちは許されたとした預言者


 皆さん、こんにちは。

 今日は、引き続きムハンマドという人物の多彩な才能を取り上げ、そこに共通して見られる彼の人間的な個性などについて、触れてみたいと思います。

 ムハンマドは本質的に宗教者ですから、彼にはもちろん宗教者としてふさわしい振る舞いの逸話がたくさん伝えられています。

 あるとき、一人の男がやってきました。この人物は、「自分は過失を犯したので、それについて告白し、罰を乞いたい」と申しました。すると、ムハンマドは男に何も尋ねませんでした。やがて礼拝の時刻になりました。ムハンマドは男と一緒に礼拝し、それが終わると、過ちについて「神の書」に従って罰するようにと求めた男に再び対面します。「神の書」とは、もちろん「クルアーン」のことです。

 「ハディース」の中では、男がいかなる罪を犯したのかは、触れられていません。「ハディース」に残されているのは、次のような話です。

 ムハンマドは「お前はわれわれと一緒に祈り、神に対して礼拝したではないか」と言ったので、その男は「はい」と答えました。すると預言者は、「アッラーはすでにお前の過ちを許された」と述べました。これを「お前の罰は免除された」と表現する伝承もあります。


●ラマダーン月に妻と交わった男に与えた罰


 大変興味深いのは、罰に当たらない軽い罪や過ちを犯した場合、それを宗教指導者(イマーム)に告げ、意見を求める者は、悔い改めるならば罰せられないというのが、ムハンマドの考えの中心にあったことです。実際にそうした人物をムハンマドが罰したことはありませんでした。

 例えば、結婚している男がラマダーン月に妻と交わるのは違法とされているのですが、そうした男についても罰しなかったという伝承も伝わっています。ある男が、ラマダーン月において妻と交わりを持ったことをあえて告げますと、ムハンマドは、「お前には奴隷がいるか」と問いました。奴隷所有の有無を問うのは、つまり金持ちかどうかという意味です。あるいは、「お前は2カ月間の断食を決心できるか」とも尋ねました。

 男の答えは、「自分は財産が乏しく、奴隷もいません。その上2カ月の断食をするほどの意志力もありません」というものでした。イスラム教徒にもいろいろなタイプが居ます。ひと月の断食だけでも大変なのですが、ラマダーン...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験
鎌田東二
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治