ムハンマドを知る
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子どもは寝床の主に属し、姦通を犯した者は石打ちの刑
ムハンマドを知る(4)宗教的厳密性と政治的柔軟性
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ムハンマドは、宗教者としての厳密性と政治家としての柔軟性が共存している点が大変に興味深いと歴史学者・山内昌之氏は語る。今回は、「姦通罪」に対するムハンマドの判断、発言を通して、彼の人物像に迫る。(全6話中第4話目)
時間:13分02秒
収録日:2015年5月28日
追加日:2015年6月25日
≪全文≫

●重大な姦通罪に対するムハンマドの考え方


 皆さん、こんにちは。

 今日は、引き続きジナー(姦通)という問題についての、罪の重さについて語りたいと思います。どうも日本人は誤解しているようなので、イスラムにおける姦通、あるいは姦通罪が大変な重みを持っているということを今日はお話ししたいと思います。

 「疑わしきは罰せず」というのは、法の大原則であります。ムハンマドの場合も同じであり、彼は疑わしい場合でもあえて事を荒立てない、そして幸せな家庭や円満な夫婦の間に波風が立つことを好まなかったというのが、自然な解釈であるかと思われます。男女の間、夫婦の間のことは、幸福な状態を維持しようとすれば、他人が詮索する必要はないという寛仁大度ぶりを発揮することもあったのです。


●ムハンマドの機知に富んだ解決策


 他人が入るとかえって夫婦喧嘩がややこしくなります。そして、しなくてもいい離婚にまで至ったり、夫婦の間にそれ以上の亀裂を招くことがあるというのは、近代や現代だけの問題ではありません。あるベドウィン(アラビア半島の遊牧民)が、ムハンマドの元にやってきた時のエピソードが残っています。

 このベドウィンは、ムハンマドと問答を交わしました。彼は、次のように自分の疑問を語りました。私の妻は、黒い子どもを生みました。すなわち、色の黒い子が生まれたのはなぜかというわけです。ムハンマドはそれに対して、「お前はラクダを持っているだろう」と尋ねました。男は、「はい」と答えます。「その色はなんだ」とムハンマドが尋ねますと、男は「それは赤茶色です」と答えました。「しかし、お前のラクダには灰色のも居るな」とムハンマドが言うと、「はい」と答えました。「どうしてそうなったのだ」と聞きますと、「それは、おそらくそのラクダには灰色の祖先がいたためと思われます」と答えたところ、ムハンマドは、「では、おそらくお前の息子も祖先のせいであろう」と答えたというのです。

 これは、なかなかに味わい深い問答であります。これについて、もちろん「ハディース」やスンナ、すなわちムハンマドの言行を記録した人たちは、詳しい解釈をしていません。ですが、常識的に考えれば、すこぶる機知(エスプリ)に富んだ鷹揚な解決策というべきでありましょう。


●家庭が基盤のイスラムでは姦通は重罪


 ムハンマドの有名な発言を振り返...

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