ムハンマドを知る
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アッラーの禁忌が犯されたときのみ苛烈な裁定を下す
ムハンマドを知る(5)棄教者の伝承と苛烈なリーダー
哲学と生き方
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ムハンマドは慈悲深い面を持つと同時に、不信仰者や棄教者に対しては非常に苛烈であったと、歴史学者・山内昌之氏は言う。しかし、ムハンマドの苛烈さは、現在のイスラム過激派のテロ行為を正当化するものではない。その理由を、ある棄教者の伝承を例に、山内氏が解説する。(全6話中第5話目)
時間:6分25秒
収録日:2015年5月28日
追加日:2015年6月29日
≪全文≫

●偶像崇拝や背教者に対し苛烈な裁定を示す


 皆さん、こんにちは。

 前回まで、ムハンマドの多面的なリーダーとしての資質について触れてきましたが、ムハンマドは寛大かつ温雅な面ばかりではなく、もちろん一己の偉大なリーダーとして厳しく非常に苛烈な側面も持っていました。特に偶像崇拝に対する厳しさ、そして不信仰者、つまり信仰を失った者、信仰を持たない者、あるいは信仰を持ちながらそれを捨てた者、すなわち背教者に対して、ムハンマドは時に苛烈な裁定や判断を示しました。

 この点について、クルアーンには次のように規定されています。アッラーとその使徒、すなわち、ムハンマドに対して戦を挑み、地上に退廃をまき散らして歩く者どもの受ける罰としては、殺されるか、あるいは磔にされるか、手と足を反対側から切り落とされるか、さもなければ国外に追放される以外ない。


●ムハンマドの厳しさを物語る棄教者への態度


 ある時、ウクル族という部族が、預言者の元にやってきました。彼らは大変うらぶれてやってきて、救いを求めたのです。そして、イスラムに改宗した彼らは、メディナのモスクの回廊に住み、その中で病気にかかりました。その時の話が、大変示唆に富んでいます。

 ムハンマドは、ラクダを連れてこさせ、喜捨としてそのラクダを彼らに与えました。ラクダの尿、ラクダの乳を飲ませるように命じました。その結果、彼らは健康を回復して、再び体もゆったりと太ってきますと、今度は、なんとあろうことかイスラム教から棄教し、しかも彼らにラクダをもたらしたラクダ飼いを殺し、そして、そのラクダを奪い去って遁走したのです。そこで、ムハンマドは追っ手を遣わします。誠に当然のことだったといえましょう。犯罪行為をした者たちに対して、まさに日本風に言えば、天網恢恢疎にして漏らさず、となるでしょうか。昼にならないうちに彼らは全員捕捉されて、連れ戻されました。

 その時のムハンマドの取った態度が、すこぶる苛烈であったわけです。これは「ハディース」の中で何カ所も記録されています。それは、まず釘を真っ赤に熱して、それで彼らの目をつぶすように命じました。そして、彼らの手と足を切り落とさせました。それは、クルアーンにのっとって、ということなのでしょう。しかも、血を止めるための焼灼(血止めの措置)も取りませんでした。その後で、彼らは溶岩台地に...

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