ムハンマドを知る
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
慈悲深さ・寛容さと前向きさを持ち合わせたバランス感覚
第2話へ進む
ムハンマドは神の啓示を受けた預言者で共同体の最高指導者
ムハンマドを知る(1)その役割と人物像
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
最近、イスラムが国際政治をにぎわすことが多くなってきたが、それに関連して「ムハンマド」という名を聞くことも多い。ムハンマドは、キリスト教のイエスや仏教の釈迦などと並び称される宗教リーダーだが、その役割には大きな違いがあるという。果たしてムハンマドとはどんな人物なのか。その役割と人物像について歴史学者・山内昌之氏が語る。(全6話中第1話目)
時間:9分02秒
収録日:2015年5月28日
追加日:2015年6月22日
≪全文≫

●ムハンマドは神の啓示を受けた歴史的人物


 皆さん、こんにちは。

 最近、イスラムが、国際情勢や国際政治をにぎわすことが多くなってきています。それに関連して、「ムハンマド」という人物の名を聞くことも多いのですが、もともとムハンマドは、唯一神アッラーから啓示を受けた預言者、すなわち神の使徒であります。

 ムハンマドは、宗教の開祖者とされるキリスト教におけるイエスや仏教の釈迦とは異なり、あくまでも神の言葉を預かった歴史的な人物ということになっており、イスラムの開祖者、あるいはイスラムの創始者という位置付けではありません。

 実在した歴史的な人物としてムハンマドは、イエス、あるいはモーセや釈迦などと並べ称せられる人物であります。確かにこうした四人はいずれも傑出したリーダー、特に宗教リーダーでありましたが、ムハンマドの場合、ユニークなのは、特に信仰、政治、社会が一体となった共同体・ウンマの最高指導者であったということです。


●イスラムの大集団を束ねる役割を果たす


 ムハンマドは、日本ではしばしば「コーラン」と呼ばれる啓典である「クルアーン」の啓示のうち、60パーセントほどをアラビア半島のメッカで受けています。しかしながら、イスラムと呼ばれることになるその宗教、信仰が、現在のような私たちの知っている世界宗教に成長したのは、メッカではなく、むしろ西暦でいえば622年にヒジュラによって、メディナに移った以降のことです。ヒジュラとは、「聖なる移動」という意味として「聖遷」と訳されることがありますが、すなわち、イスラムは、神の啓示をメッカで受けましたが、その発展はもっぱらメディナにおいて行われたと言うこともできるでしょう。

 ムハンマドは、メッカの伝統的な名門部族のリーダーたちがよって立っていたクライシュ族との争いに敗れて、メッカを追われ、メディナに移りました。長い預言者の系譜には、モーセやイエスはもとより、エレミヤ、イザヤ、エゼキエルといった預言者も含め、多くの使徒たちがいますが、このヒジュラによって、ムハンマドは、その中で最後に現れた最大の預言者であるという位置付けなのです。

 したがって、彼は単に信仰者の精神を支えるだけではありませんでした。膨張し、多数を占めるようになった信徒の共同体全体を経営し、先ほど申したメッカのクライシュ族という名門の既得権益...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦