ムハンマドを知る
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ムハンマドは法における平等をどこまでも貫いた
ムハンマドを知る(6)法の前での平等とバランス感覚
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ムハンマドは、法の前では身分や地位に関係なくいつも平等であった、と歴史学者・山内昌之氏は言う。そこには、厳格さと柔軟性が併存するムハンマドのバランス感覚が発揮されていた。山内氏がムハンマドを語るシリーズ講義最終話。(全6話中第6話目)
時間:7分01秒
収録日:2015年5月28日
追加日:2015年6月29日
≪全文≫

●法の前での平等を遵守したムハンマド


 皆さん、こんにちは。

 ムハンマドの厳しさについては、前回の講義で触れた通りでありますが、法の解釈や執行に当たって、ムハンマドが遵守していたことがあります。それは、法の前において人々、信者は全て平等であるという重要な原則であり、その原則を曲げなかったことであります。彼は、尊い人物であるのか卑しい人物であるのか、あるいは身分が高いのか低いのかによって人を差別することを極めて厳しくたしなめました。彼が法の前で同じように人に接したことは、特筆すべきことかと思います。

 何度か出てきたクライシュ族という、預言者その人も生み出した名門の部族がありますが、この名門に属するある女性が盗みを働いたという、大変困った事件が起きました。彼女の一族は大変困惑したわけです。そこで、かつてイスラムが誕生する前のメッカやメディナでは当然であったように、有力者にとりなしを頼みます。そうした習慣があって、罪一等を減じてもらうということがよく行われました。つまり、名門や尊い人間にはそういう価値があるということなのであります。そこで、預言者ムハンマドにとりなしを頼んだのです。

 しかし、ムハンマドは、部族の利益の代弁者でもなければ、地域の利害の代表者ではありませんでした。彼は、過去の有力者たちが、卑しい者たちには罰を科しながら、尊い者の罪を見逃すということをよく見てきました。そうした差別、裏表のある行為をあえてしたために、その過去の者たちは滅んだと断定したのです。

 ここで、ムハンマドは有名な言葉を残しています。それは、「ファーティマがそれを行ったとしても、彼女の手を切るであろうに」という言葉です。その罪人は女性でありましたから、ファーティマになぞらえたのです。ファーティマとは、ムハンマドの愛する娘であり、彼のいとこで後に4代目のカリフになるアリーの妻のことです。窃盗とは、そもそもそのように罪が重いものだから、ファーティマがもしそういうことをやったとしても、自分は彼女の手を切るということで、差別はしない、すなわち、とりなしを拒否したということです。


●厳格さと柔軟性が併存するイスラムの法


 サリカといいますが、窃盗はイスラムではすこぶる罪が重いのです。これは、クルアーン、さらに「ハディース」において、刑罰が固定されているという意味で固定...

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