「イスラム国(ISIL)」日本人殺害事件に際して
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
7世紀のハワーリジュ派とISとの比較
「イスラム国(ISIL)」日本人殺害事件に際して~ハワーリジュ派とイスラム国
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「イスラム国(ISIL)」事件で変化したのは中東の意識ではなく、日本自身の中東への関与姿勢ではないか、と歴史学者・山内昌之氏は問いかける。「中東で愛される日本」という建前や欧米とは一線を画する安心立命の境地から「テロリストに憎まれる日本へ」。しかし、この二面性の存在を認識して現実に直面することこそ、暴力やテロの蔓延する時代を生きる者の務めである。イスラム国と日本、そして世界の関係は、今後どうなっていくのかを考える。(後編)
時間:23分30秒
収録日:2015年2月16日
追加日:2015年2月25日
≪全文≫

●日本の対中東関係の二面性を明白にしたIS事件


 皆さん、こんにちは。

 今の「イスラム国(IS)」と日本の関わりは大事な問題ですので、今日も引き続き考えてみたいと思います。

 新年が明けて2015年1月に、後藤健二さん、湯川遥菜さんが殺害されるという、大変忌まわしい事件が起こりました。これによって、日本の中東への関与は変化しました。これまでのように「中東で愛される日本」といった建前と、欧米と違って自分たちだけは安全だという安心立命の境地だけではなく、「中東のテロリストに憎まれる日本」という本音、そして警戒心の要素も併せて持つようになったのです。

 この二面性をはっきりと認識することが、今のような暴力やテロの蔓延する時代に生きていく者たちの務めになるでしょう。

 もちろん前回お話しした通り、中東の一般市民の間には、日本に対する好感度も信頼感もあります。しかし、それに対する信頼と重ねて、ISのようなテロリズムによる暴力革命(者)を宥和できるかと考えるのは幻想に過ぎません。私たち日本人も、残念ながらそのことを悟らなければなりません。


●正統カリフのアリーを殺した「ハワーリジュ派」


 ここで紹介したいのは、7世紀の初期イスラームに生まれた「ハワーリジュ派」と呼ばれるグループです。ハワーリジュはハーリジーという言葉の複数形で、共同体の「外に出て行く(行った)者たち」を意味します。

 彼らは、どういう存在であったか。正統カリフ4代目のアリーが、敵対するムアーウィヤ(後にウマイヤ朝の初代指導者として、カリフを世襲)との間で不必要な妥協を行った時に、これを間違いであるとし、カリフといえども間違いを犯せば許されないという理屈から、アリーを暗殺する挙に出た一派でした。

 徹底して極端なハワーリジュ派は、自分たちと同調して一緒に行動しない者たちを、ムスリムとはいえない不信仰者(カーフィル)と見なします。またその場合、本人だけでなく妻子や家族を共々殺害しても、イスラム法には問われないと考える。そのような極端な結論に達したのが、ハワーリジュ派と呼ばれる人たちでした。

 ある時、ハワーリジュ派は、アラビア半島の砂漠を横切って旅をする敬虔な老ムスリムと出会います。若い妻を連れての移動中で、妻はお腹の中に子どもを身ごもっていました。ハワーリジュ派と問答を交わした結...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄