「イスラム国(ISIL)」日本人殺害事件に際して
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推測の批判は敵を利する‥古代ローマ期『モラリア』の示唆
「イスラム国(ISIL)」日本人殺害事件に際して~「イスラム国」報道への危惧
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「今回のイスラム国事件に際して、テレビやインターネットで繰り広げられた詮索や推測による政府批判には問題がある」と、イスラム研究の第一人者・山内昌之氏は危惧する。山内氏がイスラム国日本人殺害事件を語る。(シリーズ講話第2話目)
時間:5分12秒
収録日:2015年2月3日
追加日:2015年2月11日
≪本文≫

●推測による政府批判は、敵を利するのでは


 皆さん、こんにちは。まず次の言葉を共に聞いてみたいと思います。引用です。

 「敵は目を覚ましてあなたの行動をいつも見張っており、あらゆる点から取りつく場所を探して、あなたの生活を嗅ぎ回っている。敵はあらゆる友人や家族や知人を通して、実行できる限りあなたの行為を探り、その計画を探り当てようと徹底的に調べ上げる」。

 これは、紀元1世紀から2世紀にかけて古代ローマ時代のギリシャで活躍したプルタルコスの言葉です。『モラリア』という随想集に入っていますが、この言葉には何か凄味が感じられます。

 イスラム国による今回の日本人拉致、誘拐、殺害問題に対して、テレビやインターネットで繰り広げられた虚実交えた詮索、推測による政府批判の数々が、外に向かって不用意に発信され、無意識にイスラム国、比喩的に言えば「敵」を利する材料を与えたのではないかという点が危惧されます。そのことを示唆するかのような文章です。

 実際にイスラム国には、日本語を解する、あるいは日本から情報を伝える源があるのではないかと考えさせるほど、日本政府や国民、家族の動きや現状を踏まえた対応をしている節がありました。

 その意味で、イスラム国の提供映像を無批判にテレビニュースや情報番組で繰り返し放送するなど、イスラム国の狙った宣伝効果を客観的には高めたかのような局が一部にあったのは、まことに遺憾でありました。


●一次情報を持つのは理解者か人脈のある人


 そもそも、他ならぬ自分の出演するテレビやインターネットを除けば、一次的な情報ソースに接近できるはずのない人たちが、後藤健二氏たちの安否確認や現状について語るのはまことに難しいことです。もし、イスラム国の一次情報を持つ人物が存在するなら、それはイスラム国の理解者かシンパ、そこから情報を受ける立場にある人のいずれかでしょう。

 今のところ、イスラム国の立場を代弁し、その主張を日本で繰り返すイスラム国スポークスマンのような人はいないようですが、イスラム国に接触した事実や、イスラム国に人脈を持つことを隠さない人たちはいました。


●歴史的コンテクストの中で分析すべき


 一方、地域や危機管理の専門家にできることは、事件の歴史的な背景や性格を構造として分かりやすく解説することであり、再発防止に向けて事件から汲...

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