「イスラム国(ISIL)」日本人殺害事件に際して
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「良識あふれし賢き側」‥日本が採るべき道とは?
「イスラム国(ISIL)」日本人殺害事件に際して~日本は中東人道支援を止めるべきなのか
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
中東から悲惨なニュースが日々送られてくる現在、日本人としてどう向き合うべきか定めかねているのが多数の良識派ではないだろうか。中東・イスラム史研究における日本の第一人者で、古典や近代文学を通じて日本人の精神性の研究をも深めている歴史学者・山内昌之氏に、「イスラム国(ISIL)」と日本、そして世界の関係について、二度にわたって解説をしていただこう。(前編)
時間:15分18秒
収録日:2015年2月16日
追加日:2015年2月24日
≪全文≫

●中東市民の対日感情とテロリストの論理


 皆さん、こんにちは。

 今日は、中東情勢の中でも最近日本では“IS”と略することの多い「イスラム国」の問題について、特に取り上げて語ってみたいと思います。

 中東の国々やアラブの人々はよく親日的だと言われます。これは、一般論として決して間違っていません。実際、私もエジプトやトルコに長期滞在した時にそう感じましたし、彼らの人情や日本に対する好感度・信頼感というものには、誠に私たち自身が助けられた思いがしました。

 しかし、今回のイスラム国や以前アルジェリアで日本企業の関係者を相手に引き起こされたようなテロ・殺害事件に接すると、違った印象を持つ人もいるかと思います。つまり日本社会の一部の専門家やジャーナリストの中からは、中東やアラブ側の日本を見る目が変わった、日本に対する姿勢や視点が変化したと主張する論説が、決まって現れるのです。今回の日本人お二人、後藤健二さんと湯川遥菜さんが殺害されたときにも、そのような論説が現れました。

 しかし、よく考えてみましょう。中東の一般市民の人々や世論の中に日本に対する「好感度」というものはあります。しかし、イスラムの名を借り、あるいはイスラムを名分としたテロリズムによる日本人殺害やその予告に見られる「日本への敵対」や「日本人に対する脅迫」との違いには明白なものがあります。

 市民の中にある好感度や親日的な気分と、テロリストの中にある反日的な姿勢や脅迫的な言説を区別するのは、当然です。それを区別しないで、あたかも中東の空気ががらっと変わったかのように論を立てる人が必ず現れるのは、誠に困ったものです。


●日本もイスラム・テロの脅迫や犠牲を免れない


 ISのようなテロリズムの論理は、日本や日本人を含めて世界の誰でもターゲットにするのです。一体テロリストに親日や反日ということが、本当にあるのでしょうか。そんなことはあるはずもありません。

 テロリストにあるのは、彼らの目標とする戦略と、その目標を実現する戦術です。拉致誘拐においては、人質から身代金を取るのと殺害するのと、どちらが得策か。こうしたことを、彼らにとっての中長期的な関心と短期的な利害から判断する極めてプラグマティックな論理があるだけです。テロリストになっても、自分は日本人が好きだとか日本を信頼するとかといったことが、...

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