「イスラム国(ISIL)」日本人殺害事件に際して
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「良識あふれし賢き側」‥日本が採るべき道とは?
「イスラム国(ISIL)」日本人殺害事件に際して~日本は中東人道支援を止めるべきなのか
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
中東から悲惨なニュースが日々送られてくる現在、日本人としてどう向き合うべきか定めかねているのが多数の良識派ではないだろうか。中東・イスラム史研究における日本の第一人者で、古典や近代文学を通じて日本人の精神性の研究をも深めている歴史学者・山内昌之氏に、「イスラム国(ISIL)」と日本、そして世界の関係について、二度にわたって解説をしていただこう。(前編)
時間:15分18秒
収録日:2015年2月16日
追加日:2015年2月24日
≪全文≫

●中東市民の対日感情とテロリストの論理


 皆さん、こんにちは。

 今日は、中東情勢の中でも最近日本では“IS”と略することの多い「イスラム国」の問題について、特に取り上げて語ってみたいと思います。

 中東の国々やアラブの人々はよく親日的だと言われます。これは、一般論として決して間違っていません。実際、私もエジプトやトルコに長期滞在した時にそう感じましたし、彼らの人情や日本に対する好感度・信頼感というものには、誠に私たち自身が助けられた思いがしました。

 しかし、今回のイスラム国や以前アルジェリアで日本企業の関係者を相手に引き起こされたようなテロ・殺害事件に接すると、違った印象を持つ人もいるかと思います。つまり日本社会の一部の専門家やジャーナリストの中からは、中東やアラブ側の日本を見る目が変わった、日本に対する姿勢や視点が変化したと主張する論説が、決まって現れるのです。今回の日本人お二人、後藤健二さんと湯川遥菜さんが殺害されたときにも、そのような論説が現れました。

 しかし、よく考えてみましょう。中東の一般市民の人々や世論の中に日本に対する「好感度」というものはあります。しかし、イスラムの名を借り、あるいはイスラムを名分としたテロリズムによる日本人殺害やその予告に見られる「日本への敵対」や「日本人に対する脅迫」との違いには明白なものがあります。

 市民の中にある好感度や親日的な気分と、テロリストの中にある反日的な姿勢や脅迫的な言説を区別するのは、当然です。それを区別しないで、あたかも中東の空気ががらっと変わったかのように論を立てる人が必ず現れるのは、誠に困ったものです。


●日本もイスラム・テロの脅迫や犠牲を免れない


 ISのようなテロリズムの論理は、日本や日本人を含めて世界の誰でもターゲットにするのです。一体テロリストに親日や反日ということが、本当にあるのでしょうか。そんなことはあるはずもありません。

 テロリストにあるのは、彼らの目標とする戦略と、その目標を実現する戦術です。拉致誘拐においては、人質から身代金を取るのと殺害するのと、どちらが得策か。こうしたことを、彼らにとっての中長期的な関心と短期的な利害から判断する極めてプラグマティックな論理があるだけです。テロリストになっても、自分は日本人が好きだとか日本を信頼するとかといったことが、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治