●「対中関与政策」の終わりとデカップリング
小原 それでは、中国の外交に対応してアメリカは何をやろうとしているか。
1972年にリチャード・ニクソン大統領が訪中して、そこからスタートしたのが「対中関与政策」です。本シリーズではトランプ政権のいろいろな公文書やポンペオ国務長官の演説の話にふれてきましたが、その中で「関与政策ももう終わる、これは失敗したのだ」と言い出し、具体的には中国との関係、特にハイテク分野におけるデカップリング(切り離し)が行われました。ハイテクに限らず、中国の対米輸出や中国企業の対米投資を制限していったのです。
実際上、ニューヨークの株式市場や債券市場に出てきている中国企業の中には不透明性が非常にあります。その報告をきちんとしないような企業はもう締め出すというようなことで、実際にアメリカを離れ、今回香港などに移った企業もいる。それによって、香港の株式市場はなかなか落ちない。
「小原さん、香港の自由がこういう形で損なわれてくると、香港の株式市場なども落ちていくのではないかと思っていたが、どうも落ちないね」と言われる一つの理由が、今のこういった動きにもあるわけです。
さらにいえば留学があります。オーストラリア同様、アメリカも大変な数の中国の留学生を受け入れており、高等機関である大学などにとって非常に大きなプラスになっています。そういうところについても警戒感を持って、特に理科系の留学生などに対してビザを延長しないとか発行しないなどの制約を加え始めています。研究協力やデータ、情報技術を規制する立法行政措置を、アメリカは今どんどん取っているわけです。
●中国依存リスクの減少と製造国家への転換
小原 それから、もう一つは中国依存リスクを少なくしていくことです。トランプ大統領はつい先日も、大統領選挙に向けてこの話をしています。例えば医薬品に含まれる成分の8~9割は中国関係だと言われていますから、その依存をなくしたり少なくしたりしていったりするのは非常に大事なことです。あまりに中国依存が大きいと、中国から貿易が止められてしまったとき、医薬品などは大変なことになるわけです。
―― そうですね。
小原 これまであまりにも中国依存をしてきたことを考え、アメリカ市民の間で「チャイナフリー」の議論が...