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「戦狼外交」と「probing」、中国の攻撃的外交の特徴

米中関係の行方と日本の今後を読む(5)中国の自信と変化する中国外交

小原雅博
東京大学大学院 法学政治学研究科 教授
情報・テキスト
現在の中国外交には変化の兆しがある。一つは「戦狼外交」として、外部からの攻撃に対してすかさず反撃を加える点だ。もう一つは「probing(探り)」といわれ、小出しに当たって相手の反応を見る方法だ。いずれも中国が世界の大国化したことで膠着や変化を見せる国際情勢に対応するための方法だ。(全12話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16:15
収録日:2020/09/08
追加日:2020/10/17
ジャンル:
≪全文≫

●中国メディアに見る「中国の自信」


小原 では、今の中国の状況はどうなのかを知るため、ここに少し中国のメディアを紹介しました。

―― メディアですね。はい。

小原 ええ。一番下に「人民日報」とあります。これはもちろん皆さんご承知のように、共産党の機関紙です。

 この新聞が2020年8月21日に何を言っているかというと、「中国共産党の成功」という言葉があります。中国というのは、これまでも習近平国家主席による「人類運命共同体」のスローガンがあったように、トランプ氏が「一国主義」を標榜し、自分の国の利益を最優先していくのとは違う、ウィンウィンの形を目指しました。「世界とともに成長していくのだ」というスローガンやプロパガンダが実施されてきたのです。

 感染症危機においても「中国共産党の成功」は、別名「マスク外交」などといわれ、いろいろな支援を通じて、自分のことだけを考えているのではないことをアピールしています。「自分たちが感染をうまく抑え込んでいる経験を皆さんに伝えますよ」という成功への自信、これがまさに世界的な意義だと言っているわけです。

 「人民日報」の系列に「環球時報」というメディアがあります。6月15日の記事をご覧になると分かるように、「経済低落のアメリカ、経済回復する中国」というコントラストを出しています。中国は上昇、アメリカは下降で、その後は脱アメリカ、中国化という図式です。

 また、その下には「中国の政治体制が非常にすぐれていることは、今回のコロナを見ても分かるでしょう」ということが書かれ、「西側の民主主義には欠点がある。アメリカは自信を失っている」という結論になる。これらはプロパガンダとしての「中国の自信」です。


●日本は「国際社会」の見方に色眼鏡をかけていないか


小原 日本のメディアなども、やはりどうしても色眼鏡になってしまっています。西側のメディアがいずれもそうなのかもしれないですが、要するに西側はそうなのです。ただ、途上国や権威主義体制の国から見ると、やはりこう書かれると、事実はそれに近いのではないかと感じるということです。

―― なるほど。

小原 6月30日に「香港国家安全維持法」が成立した時、国連の人権理事会で投票がありました。この法律に対して賛成か反対かということでしたが、反対が27カ国ありました。これは欧米民主主義国が中心です。そういう視点から見れば、国際社会は反対なのだということですが、そこだけを報道していると見間違えます。

 実は同時に「あの法律、いいよ」と支持する票は、その倍の数あったわけです。そこには今言ったような途上国や権威主義の国があり、特に「一帯一路」を中心に、中国から支援を受けている国が今はたくさんあるわけです。同時に、中国が最大の貿易相手国だという国も非常に多くあります。

 そうなってくると、われわれはその両方を見ていかないと、世界をバランスよく見られない。アメリカサイドに立って見ているとどうしても、中国が言っているのは単にプロパガンダで現実を反映していないということになります。でも実は、その中国の立場を支持している国だってあります。

 それはもちろん経済的な「アメ」ということもあるし、逆にいうと経済的な威嚇、「ムチ」ということもあり、それが怖くて中国から「お前、支持しろ」と言われたら支持せざるを得ないような中小国もあると思います。

 いずれにせよ、国際社会を図式的に捉えるのではなく、国際社会とは一体何なのかということを常に自覚する必要がある。簡単に「国際社会が反対しています」ということでアタマ作りをしてしまうと、間違えると思います。



●中国外交の特徴、「戦狼外交」と「probing」


小原 では、今議論に出た中国の外交がどうなっているのかというと、一言でいうと、私はここに「攻撃的」と書きました。その一つ目として、最近よく「戦狼外交」という言葉が言われるようになりました。

―― 「戦う狼」ですね。

小原 中国では外交部(外務省)が記者会見を行います。外交部の報道官などのスタイルはもう「やられたらやり返す」で、中国を非難するような言動に対しては、しっかりと反論をしていく強い姿勢です。こうした外交が非常に今、目立ってきている。これは、映画のタイトル『ウルフ・オブ・ウォー』というところから来ているわけです。

 二番目に書いたのが、「probing(探り)」ということです。これはそれほど強烈な程度ではなく、それによって負わせるリスクは低いですが、相手を試す意味があるということです。特にアメリカ相手にそういうことを行うことで、アメリカがどういうリアクションをするかを測ります。

 われわ...
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