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トランプ氏が共和党を乗っ取るか?移民問題や格差での分極化

日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(5)分極化と米中関係への影響

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
トランプ政権誕生以前からアメリカやヨーロッパの政治を見守ってきた人びとにとって、ポピュリズムの蔓延と分極化の進行は世界的な課題である。アイデンティティ・ポリティクスや移民問題、アメリカの対中国外交は、今後どのような筋道をたどるのだろう。アメリカの覇権、世界秩序への影響を考えていく。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫

●「プロライフ・プロチョイス」から「マスクをする・しない」へ


曽根 (エリートとポピュリズムの対立だけではなく)トランプ氏が乗ったのは、もう10年ぐらい前から分極化しているアメリカ政治です。

―― アメリカは分かれたわけですか。

曽根 はい。「ポラライズ(polarize:分極化する)」という言葉が正しいと思う。ポラライズしているのです。

 昔は、保守と革新でポラライズするものでした。ところがアメリカのポラライズの代表は、昔から「プロライフとプロチョイス」です。プロライフとプロチョイスとは何のことかというと、プロライフは堕胎してはいけないという生命尊重勢力、プロチョイスは堕胎してもいいという選択尊重勢力です。これは人権問題のことです。

―― なるほど。

曽根 これによるいがみ合いなどがあったわけです。それから、「鉄砲規制(銃規制、gun control)」もあります。鉄砲規制に根強く賛成する派と根強く反対する派。こういうものは昔からありました。

 ところが最近は、あらゆる政策争点でポラライズが起こります。それはちょうど経済的な格差などと同じように、ポラライズしています。トランプ氏は、そのポラライズにうまく乗ったということも言えるわけです。

―― なるほど。

曽根 昔は妥協が成立したので、両院協議会で成立する法案があったことをお話ししました。今では議会の中がポラライズしているので、共和党と民主党の妥協はほとんど不可能になり、党派的な投票をするのが議会になってきました。

 最近でいえば、「マスクをする・しない」というのは、アメリカ人にとってはもうまったく党派性の問題です。トランプ支持者はマスクをしたがらない。

 そういうポラライズしたアメリカが背景にある。その分極化に乗ってトランプ氏が当選したことで、傷口に塩を塗ったように、トランプ時代にさらに分極化が進んだとはいえると思います。


●分極化が進んだアメリカ、これまでの政治の常識は通じなくなっている


―― 今回の講義シリーズで、アメリカの政治は「チェック、チェック、チェック」で進んでおり、そうは言いながらも実はオバマケアのようなものは、アンダーグラウンドでチーム的に行われたというお話がありました。こうしたアメリカの政治過程といったものは、今回のトランプ時代を経験した以降、さらに変わっていく可能性があるということです...
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