日本人が知らないアメリカ政治のしくみ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
シンクタンクを使わないトランプ政権の特異性
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(4)シンクタンクとポピュリズム
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
アメリカには多くの傑出したシンクタンクが存在して、他国では官僚機構の行う業務を補完している。ただ、トランプ政権の場合はもともと反エスタブリッシュメントを旨とし、そのことがポピュリスト的人気につながっていると考えられる。シンクタンクのような専門家への不信感はアメリカの庶民には根強く、エリートが嫌いで「アメリカを悪くしたのは、そういう既存の利害にまみれた連中だ」というポピュリズム的な動きにトランプ氏が乗ったといえるだろう。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分08秒
収録日:2020年8月27日
追加日:2020年10月21日
≪全文≫

●アメリカのシンクタンクは官僚機構を補完


―― 今回は、先生がご指摘になっているシンクタンクについてうかがいます。アメリカでは、よくシンクタンクの話を聞くことがございますけれども。

曽根 はい。アメリカの政治一般を比較するときに気をつけなければいけないのは、いろいろな点でアメリカだけが例外というケースが非常に多いことです。シンクタンクも多分その一つです。アメリカのシンクタンクは本当に傑出して規模が大きく、予算があるため、シンクタンクを考える人はアメリカを真似したいと言います。

 民間・非営利・独立という特徴があるわけですが、アメリカで民主党系のシンクタンクに行った時、イギリス人の官僚が来ていました。イギリスの公職を休んでアメリカのシンクタンクに来ていた彼が、とても面白く参考になることを言ってくれました。

「ホワイトハウスは規模が小さいですよ。あれでは政策がつくれません。だから、シンクタンクを使うのは当たり前でしょう。つまり、あれはイギリスでいえば、官僚機構がやっていることですよ」

 なるほど、それを補完する機能としてのシンクタンクなのか。イギリスや日本では、そういうことは官僚機構が行っている。その部分を独立させて、アメリカではブルッキングス、ヘリテージ、アメリカンエンタープライズのようなシンクタンクがあるわけです。


●トランプ政権からシンクタンクの使い方が変化


曽根 ただ、このシンクタンクの使い方という点に関しても、トランプ政権ではちょっと違っています。

―― なるほど。トランプ氏で変わったわけですね。

曽根 確かにトランプ氏にもヘリテージとのコネクションはあります。でも、彼の場合は、あまり政策をいろいろなシンクタンクに発注したり、あるいはシンクタンクから出ている政策を吸収して自分の政策に置き換えたり、ということは行わない人なのです。

 どちらかというと、思いつきの部分が大きい。だからシンクタンクというのは、トランプ時代ではあまり活躍の余地はないのではないかな、という気がします。

―― シンクタンクが行うのが日本やイギリスでは霞が関や官庁の領分だとすると、それを使わないトランプ氏の場合、どのようにして政策をつくっているのでしょうか。

曽根 その点、トランプ政権はなかなか読みにくいのです。彼は「アメリカ・ファースト」と言って、過去の国際的...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(5)徳は孤ならず
敬天愛人…一人ひとりを大切にしながら宇宙を相手に生きる
田口佳史
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通