ハーディングとトランプ~100年前の米大統領選を読む
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜハーディング候補は歴史的大勝を収めることができたのか
ハーディングとトランプ~100年前の米大統領選を読む(2)ハーディングの実像
東秀敏(米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー)
ハーディングは当時、共和党としては異色の政治家だった。学歴も後ろ盾もない中、ビジネスマンとして身を立て、政治家の道を志し、やがて1920年に大統領に選出されることになる。それは、彼が当時普及し始めたメディアを活用して、大衆にアピールし、支持を獲得したからである。この点、ソーシャルメディアを巧みに用いるトランプ大統領との大きな共通点である。(全6話中第2話)
時間:6分22秒
収録日:2020年6月11日
追加日:2020年8月20日
≪全文≫

●異色の共和党エリートとしてのハーディング


 このアメリカファーストを唱えたウォレン・G・ハーディング候補の人柄を見ていきましょう。

 ハーディングは、1865年に地方の州であるオハイオ州の中でも特に田舎の町で生まれ育ちました。アングロサクソン系とオランダ系の血を継いでおり、典型的な白人です。宗教的には、プロテスタントの一派のバプテスト派、福音派でした。今はなきまったく無名の地方大学を卒業した後、300ドルでオンボロ新聞社を買収して、それをオハイオ一の新聞社に育て上げました。しかも民主党の基盤であるにもかかわらず、共和党系の新聞社を地域ナンバーワンに育て上げるなど、辣腕を振るいました。

 大学時代からすでに雄弁家として活躍しており、彼が34歳のときにオハイオ州の議員に選出されました。州知事選挙で敗れますが、1914年には州知事レベルを超えて、上院議員として一気に国政デビューしました。根っからの共和党員として非常に人気がありました。

 当時はWASP、つまり白人、アングロサクソン、プロテスタントの層の支配が盤石で、加えてアイビーリーグ出身という肩書き、そして財閥の支持等を持つ人々が、談合で政治を動かしていた時代でした。しかし、ハーディングは田舎の出身で、一応WASPには該当しますが、学歴や財閥の後ろ盾もない、完全なアウトサイダーでした。彼は、「オハイオギャング」と呼ばれる地元からの縁故主義による人脈を連れてきて、地元色を強く打ち出して国政にデビューしました。しかも、トランプ大統領とはこの点で異なるのですが、敵をまったくつくらない穏健な人として振る舞って、共和党内でも独特の存在感を発揮しました。


●メディアをうまく利用して1920年に大統領に選出


 次に、この無名候補ハーディングが、大統領選挙に出馬して当選するまでの背景についてご説明します。まず背景として、共和党の重鎮のセオドア・ルーズベルトが1919年に亡くなりました。民主党のウッドロー・ウィルソン大統領は三期目を目指しましたが、あまりにも人気がないので、民主党の有力者に説得されて引き下がりました。そして共和党と民主党の双方が談合で妥協案を出し、共和党側は無名候補のハーディング、民主党側はコックスという議員を候補者としました。

 当...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾