ハーディングとトランプ~100年前の米大統領選を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ハーディングと原敬を失ったのは日米にとって大きな損失
ハーディングとトランプ~100年前の米大統領選を読む(6)日米にとっての不運
東秀敏(米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー)
ハーディングは、第一次世界大戦後の世界における最大の脅威を、日本とイギリスだと見なしていた。日本はこの転換を理解できずに、アメリカと疎遠になっていく。原敬は、ハーディングと似たような経歴を持ち、アメリカの転換を理解できる人間だったが、そうした人材を失ったことに、日本の不運がある。こうしたアメリカの変化を理解するには、実際にアメリカの田舎に住み、人々と交わる中で実体験として考え方を理解していくことが必要である。(全6話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:6分55秒
収録日:2020年6月11日
追加日:2020年9月24日
≪全文≫

●日本とイギリスを脅威と見なしていたハーディング


東 ハーディングは、イギリスとアメリカの間の緊張感の存在を前提とした世界観を持っていました。そのため、日英同盟は、太平洋における脅威と見なしていたのです。当時、アメリカはフィリピンとハワイを領有していたので、日本と大英帝国という、海で国境線を接するような関係にあると、2対1で負けると考えていました。

 このような戦略的思考をアメリカが持っていたことを日本が理解していたかは確認できません。しかし、大英帝国の地位は、第一次世界大戦の後かなり落ちました。一応、戦勝国ではありますが、アメリカの参戦がなければ勝利できなかったという事実は大きな影響力を持っていました。私見では、これから急速に成長する新興国であったアメリカと、日米同盟を組むチャンスがあったと思うのです。

―― 日英同盟が廃棄された後の話ですね。

東 そうですね。日本からは、日英同盟を廃棄する代わりに、日米同盟を結ぼうというディールをかけるべきだったと思うのです。

―― 原敬に関して、非常に残念に思うのが、彼が暗殺されたタイミングです。1918年に総理大臣に就任して、ちょうど基盤が固まってきたときでした。摂政設置問題で山県有朋の信任を得るようになり、1920年の総選挙では圧倒的な勝利を収めました。さらに、アメリカのことは本人が一番よく分かっているという状況でした。また、彼は事業家でもあったハーディングと同じように、古河鉱業の実質経営者であり、大阪毎日新聞の売り上げを社長として3倍程度伸ばしました。また、北浜銀行の経営にも関与していました。

東 そうですね。

―― このように、ハーディングと原敬には、多くの共通項があるように思います。もう少し長く総理大臣職を務めていれば、変化していくアメリカに気づいて、どのように対応していくのかと思いますが、その前に亡くなってしまいました。単純なウィルソン流の国際協調主義の時代から、次の時代を主導するアメリカの中身が、まったく別のものに変わってしまったということを、間接情報ではなく、直接自分で読み取れたのではないかと思います。この違いは大きいですね。

東 そうですよね。

―― 加えて、自分で経営していれば、アメリカの企業の素晴らしさを、感覚として理解できますね。この点は、学者や役人などとは、全く異なりますよね。この点は、一つ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦