福田赳夫と日本の戦後政治
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
派閥解体をめざす党風刷新運動の挫折…不遇から大蔵大臣へ
福田赳夫と日本の戦後政治(5)党風刷新運動の失敗と佐藤栄作政権
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
池田勇人政権の方針との食い違いが顕著になり、政調会長を辞職した福田赳夫。その後、自民党の派閥政治を改めるために「党風刷新運動」を展開したが、それも失敗に終わる。キャリアにおいて「冬の時代」を迎えた福田だったが、政権交代をきっかけに再びその歩みを進めることになる。佐藤栄作政権が成立すると、福田は初めて大蔵大臣という重要なポストに就く。その後、昭和時代最長の政権となった佐藤にとって不可欠な存在になっていく。(全9話中第5話)
時間:10分34秒
収録日:2022年9月29日
追加日:2023年6月9日
≪全文≫

●自民党の近代化を目指し起こした「党風刷新運動」


 政調会長を辞めた後しばらくして、福田赳夫が初めて自分の勢力を旗揚げすることになります。それは何かというと、「党風刷新運動」というものです。自民党の歴史を振り返ると、派閥に分かれて、その派閥のボスが首相になるために派閥同士で手を組んだり、争ったりすることがあります。

 ただもう1つ自民党の歴史を見たときに、派閥を超えて連携しようという運動が現れては消えています。一番有名なのが、石原慎太郎などが中心になってつくられた青嵐会です。おそらく自民党の歴史の中で最初につくられた超党派の運動は、この党風刷新運動だったと思うのです。まさにその中心にいたのが福田でした。

 福田はこの党風刷新運動を立ち上げて、いろいろな派閥から議員を募って、党の近代化と派閥の解消を訴えるわけです。この流れには2つの背景があり、1つは安保闘争で社会党が労働者や大衆を動員して成功したのです。自民党がそういうことをできるかというと、意外にできません。自民党はそれぞれの土地の有力者と結び付いた古い体質であり、しっかりとした組織政党にしないといけないという危機感があったわけです。

 もう1つは、自民党の中で派閥政治が横行して、派閥のボスが勝手にそれぞれ利権をあさって、金権腐敗が進んでいる。そういったものを、岸政権の時になんとかうまく改善したかったのですが、結局うまくできなかったのです。福田は池田勇人に対してあえて党風刷新を正面からぶつけることで、自民党を近代化させようとしたわけです。


●自身の派閥が分裂し失敗に終わった党風刷新運動


 ところがこの福田の運動は失敗に終わってしまいます。どうして失敗したか、その要因は大きく2つあったと思うのです。

 1つ目ですが、池田政権側が福田と同じように党改革を主張していた三木武夫に対して、党の近代化を検討する調査会を発足させて、その検討をさせたのです。これは結局、自分の敵になるような勢力をうまく分断することに成功します。三木の調査会は、党改革の近代化の答申というものを出すことで、福田がやろうとしていたことをうまく潰してしまうわけです。

 もう1つ。致命的だったのは、福田はまだこの前後の時期、岸の派閥にいたことです。ところが岸の派閥がこの時期、分裂してしまいます。派閥の難しいところで、1950年代から1960年代初...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保