福田赳夫と日本の戦後政治
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
2つの所得倍増計画…経済計画の福田とスローガンの池田
福田赳夫と日本の戦後政治(4)「所得倍増計画」の2つの系譜
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
岸信介の側近として、政権内で一気に駆け上がっていった福田赳夫。そこで福田は、いわゆる「60年安保闘争」を経て日本政治の潮目が変わる1960年代を経験することになる。福田は最後まで首相官邸に入って岸を支えた。そして、岸信介政権が倒れた後に成立したのは池田勇人政権である。政治の時代から経済の時代へと転換期を迎えた中、池田政権が進めたのが、有名な「国民所得倍増計画」であった。だが実は、この「所得倍増計画」は2種類あったという。この計画で、福田が提示したものとは。さらに、そこから浮かび上がる、当時の政権と福田の信念のズレとは。(全9話中第4話)
時間:12分49秒
収録日:2022年9月29日
追加日:2023年6月2日
≪全文≫

●その後の福田赳夫の政治観に大きく影響した安保闘争


 さて、岸信介政権を見るときに一番重要なのは、日米安全保障条約の改定問題だったのです。岸政権が安保条約を改定しようということについて、アメリカ側からの示唆を受け入れて交渉が始まったのですが、間もなく日本国内で非常に強い反対運動が盛り上がってくることになります。

 岸政権の頃の安保改定を見たときに、非常に大きな特徴の1つは、安保改定をやろうとする政府と、それに反対する革新勢力、学生、労働者という構図だけではなくて、自民党の中の派閥対立が、その後の安保改定交渉に非常に大きく影響してきたことです。この頃から、自民党の中でははっきりと派閥に分かれていって、派閥のボスが手を組んだり、離反したりして次の政権を狙うという構図ができてきていたのです。

 正確には、安保闘争の少し前に警職法闘争というものがありましたが、岸に対するそのような反発が強まる中で、自民党の中でも彼の求心力が落ちていきました。

 そういった中で、池田勇人、河野一郎、三木武夫といった有力な派閥の指導者たちは、安保改定を絡めながら岸政権を揺さぶって、自分たちが次期政権を狙っていくことになります。これによって岸政権は大きなエネルギーを吸い取られることになるわけです。

 その頃、福田赳夫が何をしていたかというと、彼は農林大臣でしたので、安保改定交渉にはほとんど関わっていなかったのです。いよいよ安保改定の問題が大詰めを迎えようとしているときに、福田はソ連のモスクワで日ソの漁業交渉をまとめていました。

 それが終わって、ちょうど帰国中であった1960年5月19日のことです。福田が、たしか帰りのパリかどこかの飛行場で新聞を読んだ時に見たと思うのですが、自民党が新しい安保条約を批准するために衆議院で一気に強行採決をするのです。そのためにそれに反発した大衆運動が一気に盛り上がって、国会の前を学生が取り巻いていく安保闘争がクライマックスに向かっていくわけです。

 福田は帰って来た後、農林省の役所には戻らずに、そのまま首相官邸に入って、そのままずっと岸のそばで、例えばアメリカ政府の駐日大使と会って交渉をしたり、いろいろと安保に関する折衝をやるのです。

 1960年6月19日に安保条約が自然成立する時のことですが、その最後の夜に首...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏