福田赳夫と日本の戦後政治
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2つの所得倍増計画…経済計画の福田とスローガンの池田
福田赳夫と日本の戦後政治(4)「所得倍増計画」の2つの系譜
政治と経済
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
岸信介の側近として、政権内で一気に駆け上がっていった福田赳夫。そこで福田は、いわゆる「60年安保闘争」を経て日本政治の潮目が変わる1960年代を経験することになる。福田は最後まで首相官邸に入って岸を支えた。そして、岸信介政権が倒れた後に成立したのは池田勇人政権である。政治の時代から経済の時代へと転換期を迎えた中、池田政権が進めたのが、有名な「国民所得倍増計画」であった。だが実は、この「所得倍増計画」は2種類あったという。この計画で、福田が提示したものとは。さらに、そこから浮かび上がる、当時の政権と福田の信念のズレとは。(全9話中第4話)
時間:12分49秒
収録日:2022年9月29日
追加日:2023年6月2日
≪全文≫

●その後の福田赳夫の政治観に大きく影響した安保闘争


 さて、岸信介政権を見るときに一番重要なのは、日米安全保障条約の改定問題だったのです。岸政権が安保条約を改定しようということについて、アメリカ側からの示唆を受け入れて交渉が始まったのですが、間もなく日本国内で非常に強い反対運動が盛り上がってくることになります。

 岸政権の頃の安保改定を見たときに、非常に大きな特徴の1つは、安保改定をやろうとする政府と、それに反対する革新勢力、学生、労働者という構図だけではなくて、自民党の中の派閥対立が、その後の安保改定交渉に非常に大きく影響してきたことです。この頃から、自民党の中でははっきりと派閥に分かれていって、派閥のボスが手を組んだり、離反したりして次の政権を狙うという構図ができてきていたのです。

 正確には、安保闘争の少し前に警職法闘争というものがありましたが、岸に対するそのような反発が強まる中で、自民党の中でも彼の求心力が落ちていきました。

 そういった中で、池田勇人、河野一郎、三木武夫といった有力な派閥の指導者たちは、安保改定を絡めながら岸政権を揺さぶって、自分たちが次期政権を狙っていくことになります。これによって岸政権は大きなエネルギーを吸い取られることになるわけです。

 その頃、福田赳夫が何をしていたかというと、彼は農林大臣でしたので、安保改定交渉にはほとんど関わっていなかったのです。いよいよ安保改定の問題が大詰めを迎えようとしているときに、福田はソ連のモスクワで日ソの漁業交渉をまとめていました。

 それが終わって、ちょうど帰国中であった1960年5月19日のことです。福田が、たしか帰りのパリかどこかの飛行場で新聞を読んだ時に見たと思うのですが、自民党が新しい安保条約を批准するために衆議院で一気に強行採決をするのです。そのためにそれに反発した大衆運動が一気に盛り上がって、国会の前を学生が取り巻いていく安保闘争がクライマックスに向かっていくわけです。

 福田は帰って来た後、農林省の役所には戻らずに、そのまま首相官邸に入って、そのままずっと岸のそばで、例えばアメリカ政府の駐日大使と会って交渉をしたり、いろいろと安保に関する折衝をやるのです。

 1960年6月19日に安保条約が自然成立する時のことですが、その最後の夜に首...

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