戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ山本五十六は真珠湾への「奇襲攻撃」を選択したのか?
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(2)真珠湾攻撃・山本五十六
山下万喜(元海上自衛隊自衛艦隊司令官)
当時の日本海軍にとって画期的な作戦だった昭和16(1941)年12月8日の真珠湾奇襲攻撃は、連合艦隊司令長官・山本五十六の卓抜な決断によって可能となったものだった。海上自衛隊幹部学校長・山下万喜氏が、現代の意思決定プロセスの観点から分析を行い、山本の決定に秘められた合理的側面を明らかにする。「決断」をする人全てが注目すべき、意思決定の事例分析。シリーズ第2回。
時間:14分17秒
収録日:2015年7月29日
追加日:2015年9月24日
≪全文≫

●もし私が真珠湾奇襲攻撃前の山本五十六だったら


 こんにちは。海上自衛隊幹部学校長の山下です。本日は意思決定プロセスの第二回目となります。今回は「もし私が山本五十六だったら」との視点に立って、昭和16(1941)年12月8日に真珠湾奇襲作戦を実行した連合艦隊司令長官・山本五十六の歴史上重要な決断について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。それでは話を進めてまいります。

 まずは軍事における指揮官の一般的な意思決定プロセスについてのおさらいから始めます。まず上級指揮官から任務を与えられたならば、最初の「使命の分析」の段階で、自分は何をなすべきかについて検討します。次に「情勢の分析及び彼我方策の見積り」は、変化する情勢を分析し、敵の方策を見積もります。「彼我方策の対抗・評価」の段階では、敵の方策と我の方策を対抗させて、最終的に「意思決定」への段階で、我の最善の方策を決定します。

 特に「彼我方策の対抗・評価」では、スライドのようなマトリックスを作成し分析します。左側の赤い部分に敵の方策を列挙し、次に上の青い部分に我の方策を列挙します。そして、双方が対抗した場合の予想結果を、マトリックスの交差部分に記録します。この予想結果を受けて、スライド下部に示す、スィータビリティー・フィージビリティー・アクセプタビリティーの観点で我の方策を比較検討します。スィータビリティーとは、我の方策が使命達成にどの程度役に立つか。フィージビリティーは我の方策が実施できるか、またはその難易はどうか。アクセプタビリティーとは、我の方策の実施に際して生じる負担や損失に耐えられるかということです。これらについて総合評価し、最終的に最善の方策を選択し、意思決定します。


●開戦以前における連合艦隊の基本戦略は「待ちぶせ」だった


 それでは山本五十六が太平洋戦争劈頭(へきとう)の真珠湾奇襲作戦を決断したことについて、この意思決定プロセスを適用し、その判断について考えてみましょう。

 戦前の昭和11(1936)年に改定された「帝国国防方針」は、「東洋に在る敵を撃滅し其の活動根拠を覆し、かつ本国方面より来攻する敵艦隊の主力を撃滅するを以て初期の目的とする」とされています。「用兵綱領」には、「米艦隊の来攻に先立ち邀撃(ようげき)準備を整え、米艦隊が来攻する場合はこれをわが本土近海に邀撃撃...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦