海上自衛隊の人材育成と米海軍との連携がもたらすもの
海上自衛隊はアメリカ海軍に学んでいる
海上自衛隊の人材育成と米海軍との連携がもたらすもの
政治と経済
山下万喜(元海上自衛隊自衛艦隊司令官)
海上自衛隊幹部学校長・山下万喜氏が、あまり知られていない自衛隊員のキャリアパスやアメリカ海軍との連携について語る。欧米流の意思決定プロセスを身に付けなければ、相手に話を聞いてもらえない。グローバル化・高度情報化した社会を生き抜くためにも、「何のための意思決定か」をはっきりさせることが必要なのだ。(インタビュー第2話目)
時間:15分19秒
収録日:2015年6月15日
追加日:2015年10月22日
収録日:2015年6月15日
追加日:2015年10月22日
≪全文≫
●海上自衛隊における人材育成法
―― 海軍の場合、士官の組み立て方は、ウェストポイント(注:アメリカの陸軍士官学校)のような所がまずあるわけですよね。
山下 はい。学校があります。
―― その後、海軍大学に行くのですね。
山下 部隊の経験を経ながら、基礎的な部分と術科的な部分が教育の大きな柱になっています。基礎的な素養教育と術科教育を重要視していきますので、素養だけがあっても術科が追い付かなければ話になりませんし、術科だけで素養がついていないと何のために技術力を上げているのかという話になります。幹部教育はこのバランスを重視していきます。
―― 自衛隊の人たちのことを役人組織と言ったらおかしいかもしれませんが、日本の官僚組織の中で、現場をやって研修をやって、また現場をやって研修をやってということが体系的にできているのは、自衛隊だけではないですか。他の役人の組織は、最初に研修があり、留学している人は留学期間がありますが、それ以上体系的なものはないですよね。
山下 多分これは、陸自・海自・空自でも考え方が多少違います。人間の持ち得た時間をどれだけ有効に使うかを考えたときに、ある分野のスペシャリストだけを使おうと考えるのも決して間違いではないでしょう。あるいは、現場に行き、また戻って政策的なことを考える人材を育てるため、そこのローテーションをうまくやるというやり方もある。ですが、そうしたやり方の意味を本人がきちんと理解した上で、そのローテーションに耐えることができるかどうかを比較すると、単純にスペシャリストを5、6年使った方が楽です。2年おきに自分がトラバーユ(配置転換)していくわけですが、部隊にわざわざ戻して2年間の経験を生かせといったことをやったとしても、本人がそれをきちんとやってくれるかどうかは、非常に冒険的なところがあります。どちらが良いかを考えたとき、陸海空でもだいぶ考え方が違うところがあります。
ましてや、いま指摘されたように、役人ないし国家公務員の世界では、自衛隊のような、特に部隊というものを捉えた上で、いろいろなことを考えていかなければいけない組織と、そうではない組織があります。そもそも部隊そのものがどこにあるかが問題なのかもしれませんが、部隊のあるなしを評価するかしないかで、組織としてだいぶ違いが出てくると思います。
海上自衛隊では...
●海上自衛隊における人材育成法
―― 海軍の場合、士官の組み立て方は、ウェストポイント(注:アメリカの陸軍士官学校)のような所がまずあるわけですよね。
山下 はい。学校があります。
―― その後、海軍大学に行くのですね。
山下 部隊の経験を経ながら、基礎的な部分と術科的な部分が教育の大きな柱になっています。基礎的な素養教育と術科教育を重要視していきますので、素養だけがあっても術科が追い付かなければ話になりませんし、術科だけで素養がついていないと何のために技術力を上げているのかという話になります。幹部教育はこのバランスを重視していきます。
―― 自衛隊の人たちのことを役人組織と言ったらおかしいかもしれませんが、日本の官僚組織の中で、現場をやって研修をやって、また現場をやって研修をやってということが体系的にできているのは、自衛隊だけではないですか。他の役人の組織は、最初に研修があり、留学している人は留学期間がありますが、それ以上体系的なものはないですよね。
山下 多分これは、陸自・海自・空自でも考え方が多少違います。人間の持ち得た時間をどれだけ有効に使うかを考えたときに、ある分野のスペシャリストだけを使おうと考えるのも決して間違いではないでしょう。あるいは、現場に行き、また戻って政策的なことを考える人材を育てるため、そこのローテーションをうまくやるというやり方もある。ですが、そうしたやり方の意味を本人がきちんと理解した上で、そのローテーションに耐えることができるかどうかを比較すると、単純にスペシャリストを5、6年使った方が楽です。2年おきに自分がトラバーユ(配置転換)していくわけですが、部隊にわざわざ戻して2年間の経験を生かせといったことをやったとしても、本人がそれをきちんとやってくれるかどうかは、非常に冒険的なところがあります。どちらが良いかを考えたとき、陸海空でもだいぶ考え方が違うところがあります。
ましてや、いま指摘されたように、役人ないし国家公務員の世界では、自衛隊のような、特に部隊というものを捉えた上で、いろいろなことを考えていかなければいけない組織と、そうではない組織があります。そもそも部隊そのものがどこにあるかが問題なのかもしれませんが、部隊のあるなしを評価するかしないかで、組織としてだいぶ違いが出てくると思います。
海上自衛隊では...
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