本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
大正デモクラシーにも影響を与えたといわれるドイツの書物
第2話へ進む
日本の近代史の大きな転換点は明治天皇の崩御だった
本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(1)「明治精神」の死
渡部昇一(上智大学名誉教授)

講義一覧を見る▼
1912年7月29日、明治天皇の崩御は、いわゆる「明治の精神」が死んだという意味でも、当時の日本人に大きな衝撃を与えたという。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第1話。
時間:5分54秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年8月17日
≪全文≫
 昭和史は、大正時代と切っても切れない関係にある。そして、その大正時代を方向づけた大きな出来事こそ、明治天皇の崩御(明治45年〈1912〉7月29日)であった。これこそまさに、日本の近代史の大きな転換点だった。

 明治天皇の崩御はいわゆる「明治の精神」が死んだという意味でも、当時の日本人に大きな衝撃を与えた。夏目漱石の『こころ』に出てくる「先生」も、主人公に宛てた手紙の中で、

〈すると夏の暑い盛りに明治天皇が崩御(ほうぎょ)になりました。その時私は明治の精神が天皇に始まって天皇に終ったような気がしました。最も強く明治の影響を受けた私どもが、その後に生き残っているのは必竟(ひっきょう)時勢遅れだという感じが烈(はげ)しく私の胸を打ちました。私はあからさまに妻にそう云いました。妻は笑って取り合いませんでしたが、何を思ったものか、突然私に、では殉死でもしたらよかろうとからかいました〉
(夏目漱石『こころ』)

 と書き、自殺の決心を打ち明けている。

 明治天皇の死、乃木大将の死を受けて、漱石が小説の登場人物を死に向かわせたくなるほどの雰囲気だったのだ。また、森鷗外も『興津弥五右衛門の遺書』で同じテーマを扱っている。

 実際、明治天皇が亡くなられた頃から、日露戦争に勝利したあとの戦勝気分が薄れ、日本人の心がなんとなくたるみ始めてきたような気がする。

 そもそも、日露戦争に勝ったと気分が高揚するのはいいにしても、それで驕(おご)りや気のゆるみのようなものが生じたこともあったのではないかと思う。

 その一つが、第二次西園寺公望内閣(明治44年〈1911〉8月30日~大正元年〈1912〉12月21日)のときに起きた二個師団増設問題である。

 当時、陸軍大臣だった上原勇作中将(のち元帥)が、ロシアの脅威や朝鮮併合にともなう常設師団の駐留を理由に二個師団の増設を求めた。西園寺首相が財政難を理由にその要求を断ると、上原勇作という人は、いわゆる帷幄(いあく)上奏権を使って即位直後の大正天皇に直接訴えることまでやった。結果、上原陸相は単独辞職することになるが、陸軍は後任の陸相を出さず、西園寺内閣は総辞職したのである。

 明治憲法には内閣総理大臣についての規定がなく、内閣総理大臣も他の国務大臣と同格だった。要するに、当時の内閣総理大臣は内閣の取りまとめ役のようなも...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
ソフトな歴史学のすすめ(1)グローバル・ヒストリーと民俗学
グローバル・ヒストリーの中で日本の歴史を俯瞰する意味
上野誠
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
昭和の名将・樋口季一郎…ユダヤ人救出編(1)決断と信念のユダヤ人救出
毅然として人道を貫き、命を救う…樋口季一郎のユダヤ人救出
門田隆将
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(1)はじめに
新史料の発見で見直される「本能寺の変」
藤田達生

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(13)心の「柔軟性」を高めるヒント
【10minでわかる】心の「柔軟性」を高めるヒント
テンミニッツ・アカデミー編集部
昭和の名将・樋口季一郎…ユダヤ人救出編(3)救った人数とゴールデンブックの謎
樋口季一郎のユダヤ難民救出数は?ゴールデンブックの謎は?
門田隆将
「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス(1)人口問題の本質
「逆・タイムマシン経営論」は本質を見抜くための方法論
楠木建
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(9)ユダヤ人の多様性
ユダヤ人は一枚岩ではない…米国ユダヤ人のイスラエルへの違和感
鶴見太郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
生き抜くためのチカラ~為末メソッドに迫る(4)人生の勝敗を考える
幸せの鍵「なにげなさ」とは何のことか
為末大
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(1)総力戦時代の到来
日英同盟の廃棄、総力戦…世界秩序の激変に翻弄された日本
中西輝政
不便益システムデザインの魅力と可能性(1)「便利・不便」「益・害」の関係
「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心
川上浩司