本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ABCD包囲陣は不戦条約違反ではないのか
本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(14)いわゆる「不戦条約」の偽善
渡部昇一(上智大学名誉教授)

講義一覧を見る▼
戦争を放棄し、平和的手段により紛争を解決することを規定した1928年のいわゆる不戦条約。日本は本条約が自衛権を否定していないことなどから批准した。しかし、本条約草案段階の米国議会で、交渉を担当したケロッグ米国務長官は、侵略戦争について「経済的に重大な圧迫を加えられるときも認める」と答えている。ならばABCD包囲陣とは一体何なのか。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第14話。
時間:2分57秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年8月20日
≪全文≫
 もう一つの問題は、不戦条約と呼ばれるケロッグ・ブリアン条約(昭和3年〈1928〉)だ。これは、フランスのブリアン外相とケロッグ米国務長官の間で交渉が行なわれ、多国間条約として提案されたもので、第1条に「締約国は、国際紛争解決のため戦争に訴ふることを非とし、かつその相互関係において、国家の政策の手段としての戦争を放棄することを、その各自の人民の名において厳粛に宣言」するとある。

 日本国憲法9条第1項に書いてあることと、非常によく似てはいないか。

 田中義一内閣(昭和2年〈1927〉4月20日~4年〈1929〉7月2日)は、この条約が自衛権を否定していないことなどから同条約を批准した。ところが第1条の「人民の名において」という文言が、明治憲法が定める天皇の統治大権に抵触するのではないかという議論が起こり、田中内閣は窮地に立たされ、そのとき全権として調印した内田康哉が枢密顧問官を引責辞任している。

 後年の東京裁判では、日本がこの不戦条約にも違反したとして裁かれているが、とくにアメリカには、日本をそのように断罪するに足る資格があるとは思えない。

 というのも、この条約の草案段階で、米議会は「アメリカ人は戦争を悪いとは考えていない」と反対しているのである。ところがケロッグ国務長官は「これは侵略戦争を止めるための条約である。自衛の戦争はやってもいい」と答弁し、「侵略戦争とそうでない戦争はどこが違うのか」という質問に対しては、「侵略戦争とは攻め込まれて国境を侵されたということだけでなく、経済的に重大なる圧迫を加えられたときも侵略戦争と認める」と答えたのだ。

 ならば、航空用ガソリンやくず鉄の禁輸、石油の全面禁輸などで日本の経済封鎖を進めたABCD包囲陣は、まったくの不戦条約違反である。日本が不戦条約に違反し、侵略戦争を行なったなどと、アメリカにはいわれたくないと私は思う。

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一