本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死
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山県有朋がつくった軍部大臣現役武官制がやがて大問題に
本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(4)ドイツでさえ軍部大臣現役武官制ではなかった
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)

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当時、文民ではなく武官が軍を統制していたのは日本や中国、スペインくらいで、ドイツでさえ軍部大臣現役武官制ではなかった。そして、その発端は、山県有朋の軽い気持ちからだった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第4話。
時間:6分07秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年8月17日
≪全文≫
 そもそも、陸海軍大臣は現役の大将または中将に限るという軍部大臣現役武官制ができたのは、明治33年(1900)、第二次山県有朋内閣時代のことだ。陸軍参謀本部を創設し初代参謀長を務めた山県有朋は、当時、陸軍の神様のような存在だったから、おそらく「軍部の大臣には軍人がなるのが当たり前ではないか」という軽い気持ちで軍部大臣現役武官制をつくったのだろう。それが先の二個師団増設問題で、初めて問題になった。

 先にも触れたように、明治憲法には内閣総理大臣に関する規定がない。元老や重臣の助言により天皇陛下から組閣を命じられ、首相と称してはいても、憲法での地位の裏付けがないために、閣僚が一人でもごねると閣内不一致で総辞職せざるをえなかった。

 大東亜戦争でも、東條英機内閣で同じようなことが起きている。東條首相は内閣改造のために国務大臣の岸信介に辞職を促したが、岸が応じないため内閣総辞職した。

 ちなみに、いまの日本国憲法と明治憲法を比べて、現行憲法が格段に良い点が二つあると私は考えている。それは首相が閣僚のクビを切れることと、刑事被告人が反対尋問を行なえることである。この二つが、明治憲法には欠けていた。

 話を戻すと、やはり制度上では、誰でも軍部大臣になれるようにしておけばよかったのだと私は思う。軍部大臣が現役武官に限られると、たとえば陸軍から推された人物は陸軍の利益を代表することになる。そうなれば、とかく陸軍の利益ばかりを代表しかねず、国の代表とはいえなくなってしまう。

 こうした日本の制度は当時の世界標準からも、かなりかけ離れていた。ドイツでさえ軍部大臣現役武官制をとっていなかった。先の戦争を見ても、ルーズベルト大統領もチャーチル首相も、スターリン書記長もムッソリーニ首相も文民で、文民統制が機能していた。その当時でも、文民ではなく武官が軍を統制していたのは日本、シナ、スペインぐらいだったのではないか。

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