本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死
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教育勅語で徹底すべく起草されたものとは?
本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(16)悲劇の時代を率いた「教育勅語を知らない世代」  
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)

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明治時代を築いたのが「江戸時代の武士の道徳を身につけた世代」だとすれば、大正デモクラシーから日本の敗戦へと至る悲劇の時代を率いたのは、明治天皇が憂慮された教育状況の中で成長した「教育勅語を知らない世代」であった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第16話。※本項には該当映像がありません。
時間:9秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年8月20日
≪全文≫
 明治天皇は、明治12年(1879)に「教学聖旨」という大方針を示し、教育へのご懸念を示された。さらに、深い信頼を寄せていた儒学の侍講・元田永孚に命じて『幼学綱要』を編纂させた(明治15年〈1882〉)。これは初学者向けに、さまざまな道徳的な逸話を集めて人倫の道をやさしく説くものであり、この完成を喜ばれた明治天皇は、宮中で女官たちに自ら講義をされたと伝わる。

 そして、さらに広く、わが国の「不易」を徹底させるべく起草されたのが、「教育勅語」だったのである。

 教育勅語を起草した中心人物は、元田永孚と、伊藤博文の懐刀であった井上毅である。井上毅で特筆すべきは、日本古来の人倫の道を基本に置きつつ、儒学やキリスト教などの学派臭や宗派臭といった「臭み」を廃して、誰が読んでももっともだと思う表現で示そうと考えたことであった。明治天皇も熱心にお考えを示され、それをもとに井上や元田が文章の修正を重ねていったという。小さなことではあるが、井上も元田も同郷だった(熊本)。これは方言がひどかった時代に、細かい点まで腹を割って語るのを可能にしたのではないか。

 さらに井上は、憲法に基づく立憲体制下では、道徳を法律的に命令することは許されないと考えていた。大日本帝国憲法では、「凡て法律勅令其の他国務に関る詔勅は国務大臣の副署を要す」とされていたが、教育勅語は明治天皇が親しく国民に発せられたお言葉として、大臣副署なしに発布されている。

 教育勅語には、「父母に孝に、兄弟に友に、夫婦相和し、朋友相信じ、恭倹己れを持し、博愛衆に及ぼし、学を修め、業を習い、以て智能を啓発し、徳器を成就し、進んで公益を広め、世務を開き、常に国憲を重んじ国法に遵い、一旦緩急あれば義勇公に奉じ、以て天壤無窮の皇運を扶翼すべし」という徳目が示され、さらに、「よく忠に、よく孝に、億兆心を一にして世々その美をなせるは我が国体の精華」であり、「この道は実に我が皇祖皇宗の遺訓にして子孫臣民のともに遵守すべき」ものと書かれている。

 ここには「不易」としての日本古来の美風を重んじる明治天皇の御心がよく表わされている。しかも天皇は最後に「その徳を一にしよう」とおっしゃっているのだ。命令でなく一緒に実践しようというのである。

 教育勅語は、発表直後に各国語に訳され、主要国に送られるが、どの国からも高い評価が寄せ...

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