本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
教育勅語で徹底すべく起草されたものとは?
本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(16)悲劇の時代を率いた「教育勅語を知らない世代」  
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)

講義一覧を見る▼
明治時代を築いたのが「江戸時代の武士の道徳を身につけた世代」だとすれば、大正デモクラシーから日本の敗戦へと至る悲劇の時代を率いたのは、明治天皇が憂慮された教育状況の中で成長した「教育勅語を知らない世代」であった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第16話。※本項には該当映像がありません。
時間:9秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年8月20日
≪全文≫
 明治天皇は、明治12年(1879)に「教学聖旨」という大方針を示し、教育へのご懸念を示された。さらに、深い信頼を寄せていた儒学の侍講・元田永孚に命じて『幼学綱要』を編纂させた(明治15年〈1882〉)。これは初学者向けに、さまざまな道徳的な逸話を集めて人倫の道をやさしく説くものであり、この完成を喜ばれた明治天皇は、宮中で女官たちに自ら講義をされたと伝わる。

 そして、さらに広く、わが国の「不易」を徹底させるべく起草されたのが、「教育勅語」だったのである。

 教育勅語を起草した中心人物は、元田永孚と、伊藤博文の懐刀であった井上毅である。井上毅で特筆すべきは、日本古来の人倫の道を基本に置きつつ、儒学やキリスト教などの学派臭や宗派臭といった「臭み」を廃して、誰が読んでももっともだと思う表現で示そうと考えたことであった。明治天皇も熱心にお考えを示され、それをもとに井上や元田が文章の修正を重ねていったという。小さなことではあるが、井上も元田も同郷だった(熊本)。これは方言がひどかった時代に、細かい点まで腹を割って語るのを可能にしたのではないか。

 さらに井上は、憲法に基づく立憲体制下では、道徳を法律的に命令することは許されないと考えていた。大日本帝国憲法では、「凡て法律勅令其の他国務に関る詔勅は国務大臣の副署を要す」とされていたが、教育勅語は明治天皇が親しく国民に発せられたお言葉として、大臣副署なしに発布されている。

 教育勅語には、「父母に孝に、兄弟に友に、夫婦相和し、朋友相信じ、恭倹己れを持し、博愛衆に及ぼし、学を修め、業を習い、以て智能を啓発し、徳器を成就し、進んで公益を広め、世務を開き、常に国憲を重んじ国法に遵い、一旦緩急あれば義勇公に奉じ、以て天壤無窮の皇運を扶翼すべし」という徳目が示され、さらに、「よく忠に、よく孝に、億兆心を一にして世々その美をなせるは我が国体の精華」であり、「この道は実に我が皇祖皇宗の遺訓にして子孫臣民のともに遵守すべき」ものと書かれている。

 ここには「不易」としての日本古来の美風を重んじる明治天皇の御心がよく表わされている。しかも天皇は最後に「その徳を一にしよう」とおっしゃっているのだ。命令でなく一緒に実践しようというのである。

 教育勅語は、発表直後に各国語に訳され、主要国に送られるが、どの国からも高い評価が寄せ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
中島隆博
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「アカデメイア」から考える学びの意義(4)学びの3つのキーワード
より良い人生への学び…開かれた知、批判の精神、学ぶ主体
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編(2)神々のささやく世界
「神々のささやく世界」では神々の声が行動を決める
本村凌二
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規