本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アジアの解放を成し遂げようという動きが在野に広まる
本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(11)尊王攘夷とアジア主義
渡部昇一(上智大学名誉教授)

講義一覧を見る▼
日英同盟を破棄した当時、日本国民に反英思想はなかったが、後年、反英感情が煽られていった。その背景には明治維新以来、西洋列強に対抗してきた「尊王攘夷」や、日清・日露戦争後に広まったアジア主義の気風があった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第11話。
時間:1分27秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年8月17日
≪全文≫
 実際に当時の一般の日本国民に反英思想はなかった。ずいぶんあとの話になるが、私が中学に入ったのは昭和18年(1943)である。当時はすでに日本軍がシンガポールを陥落させ、ビルマ(現・ミャンマー)のマンダレーも落としていた頃だ。にもかかわらず、英語の教科書はイギリス王家の紋章を表紙にあしらった『ザ・キングズ・クラウン・リーダーズ』という本で、イギリスの生活について書かれていたものだった。昭和19年までは、英語の教科書にしてもそうだったのである。

 後年、日本で反英感情が煽られていったことは事実だが、それにも事情がある。

 明治維新以来、日本国内には「尊王攘夷」、すなわち西洋の帝国主義・植民地主義に対抗しようという気風は脈々と存在し続けていた。西欧列強の脅威から国を守るために維新を起こしたようなものだから、当然といえば当然である。

 日本が日清・日露の両戦争に勝ち、自国の安全を存分に確保する状況になると、さらにアジアの人々と連携して、アジアの解放を成し遂げようというアジア主義の動きが、とくに在野勢力を中心に根強く広まっていくことになる。孫文らを助けて中国革命を支援したり、インドの志士たち(たとえば新宿の中村屋に匿かくまわれたラス・ビハリ・ボースら)を助けてインド独立を支援したりするような動きを主導したのは、まさにそのような勢力である。当時、アジアで最大の植民地を誇っていたのがイギリスだから、そのようなアジア主義者たちがイギリスに対する敵愾心(てきがいしん)を高めていくことは、必然といえば必然であった。

 一方、イギリスも日英同盟の破棄後、ソ連がコミンテルンの活動を通じて中国における民族主義を煽動して、排外運動・革命運動を高めていくと、その矛先を自分の国から日本に向けるように仕向けるように動いている。

 たとえば昭和14年(1939)4月に天津のイギリス租界で親日派の華北臨時政府の要人が暗殺されたが、イギリス側は犯人引き渡しを拒否するようなこともあった。それをきっかけに同年6月、日本軍は天津のイギリスおよびフランス租界を封鎖することとなる。もともとイギリス租界で、宣教師などが反日感情を煽るなどの利敵行為が行なわれていたことも背景にある。租界の封鎖にはイギリス側もさすがに怒ったと思うが、日英同盟が廃止されてから、かなりあとの話だ。

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(2)プロテスタントと「予定説」
カトリックとプロテスタントの違いは?「救済予定説」とは?
橋爪大三郎
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理