本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
第一次大戦のドイツの敗北は「軍人の敗北」
本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(9)「軍人には娘を嫁がすな」
渡部昇一(上智大学名誉教授)

講義一覧を見る▼
1918年、25カ国が参戦した第一次世界大戦が終わり、世界は一転して平和を希求するようになった。そして日本においても軍人を軽視する風潮が急速に高まっていった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第9話。
時間:5分41秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年8月17日
≪全文≫
 このような対ソ干渉戦争はあったものの、総じていえば、25カ国が参戦し、主戦場となったヨーロッパに大きな惨禍をもたらした第一次世界大戦が大正7年(1918)に終わると、世界は一転して平和を希求するようになる。

 後世の評価には諸説もあるが、強権的な軍国主義であるドイツが敗れ、デモクラシーを掲げる国が勝ったという認識が第一次世界大戦後の世界に広がった。それを受けて日本にも、デモクラシーや民主主義を礼賛する風潮が生まれている。

 そのため、尼港事件に激昂した当時の日本人の間にも、徐々に「大戦が終わったのに、まだシベリアに兵隊がいるのは何事か」と、シベリア派兵に対する反対論が出始めた。「これは軍上層部の勲章稼ぎではないか」という批判さえあった。

 日清、日露戦争では正味8カ月から1年半ぐらいしか戦争をしていないことから見れば、シベリア出兵は派兵期間が非常に長かった。陸軍は、極寒の地に同じ部隊をいつまでも置いておくわけにはいかないので、駐留部隊を頻繁に交代させていた。

 結局、日本は第一次世界大戦への参戦自体を断っていたのに、シベリアには4年間出兵し、何の得るところもなく引き揚げることとなった。

 当時の風潮がわからないと、理解できないことは非常に多い。実は当時、日本においても軍人を軽視する風潮が急速に高まっていたのである。

 明治以来、軍人たちは威張っていた。とくに日露戦争では、論功行賞で多くの男爵や子爵が出たからなおさらである。ところが、第一次世界大戦でのドイツの敗北は、「軍人の敗北」のように受け取られた。

 演習帰りの軍人たちは国民の冷たい視線を浴び、「軍人には娘を嫁がすな」とさえいわれるようになった。そのため軍人が軍服を着て町に出るのを嫌がって、私服に着替えて外出するという風潮さえ生まれていたのである。

 一方、日本を意識してのことだと思われるが、アメリカは第一次世界大戦中にダニエルズ・プランと呼ばれる海軍拡張計画を立案し、総勢百数十隻の大艦隊をつくろうとした。

 第一次世界大戦後もアメリカは建艦計画を立案したが、世界が平和を求め、戦争もないのに大規模な建艦計画を実行するのは難しく、軍備制限の気運が高まった。

 そこでアメリカのハーディング大統領が、ワシントン会議(大正10年〈1921〉)を提唱する。

 あとから考えると、アメリカの...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦