本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死
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ワシントンに赴き日英同盟破棄に反対した渋沢栄一の危機感
本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(10)日英同盟廃棄という致命的な失敗
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)

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1921年、日本、アメリカ、イギリス、フランスの四カ国条約により、日英同盟の廃止が決定された。この廃止はアメリカが強く主張したものであり、その後の日本の孤立化の契機となった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第10話。
時間:6分24秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年8月17日
≪全文≫
 ところが、ワシントン会議の本当の意味は、軍縮条約と並行して採択された条約や決議にあった。

 その最大にして最悪のものはいうまでもなく、日英同盟が廃棄され、日英米仏の四カ国条約が結ばれたことである。

 日英同盟の廃止の口実は、たしかにあった。元来、日英同盟はロシアに対する日本の防衛のために結ばれたものだったから、革命でロシアが滅んだ以上、日英同盟は必要ないという理屈である。

 またアメリカが、ロシア革命をあまり危険視していなかったことも大きい。アメリカはロシアで共産党が革命を起こして皇帝一族を根絶やしにし、帝政ロシア時代の債務の不履行を一方的に宣言しようが、ほとんど直接的な被害を受けなくてすむ国だった。しかも一般のアメリカ人は「ボルシェビキは皇帝を倒し、あの国を共和制にした」といわれれば納得した。実際には共産党の独裁だからまったく違うのだが、とりあえず「帝政を倒した共和制」という言い方をすれば、アメリカと同じ政治体制の国になるわけで、同情的な気持ちにもなる。

 日英同盟を廃止すべきだと強く主張したのは、アメリカとカナダだけであり、イギリスは同盟廃止をとりたてて主張していない。

 アメリカからすれば日英同盟がある限り、アメリカが日本と戦うことになったら、イギリスは日本の味方となる。そうなるとアメリカは、太平洋と大西洋という両面から挟み撃ちされることになる。そのような事態は、アメリカとしては何としても避けねばならぬことだった。しかも、そもそも日英同盟の主敵であったロシア帝国もドイツ帝国も第一次世界大戦で崩壊したので、アメリカからすれば、日英同盟の矛先が自分自身に向けられているような感覚にとらわれることとなった。しかも日本は、日英同盟を笠に着て、アメリカが進出したくてたまらない中国に対し、好きなように振る舞っているようにも見えた。

 だがイギリスは、かつて自らが決定した同盟政策を自分から取り下げるようなマネはしなかった。大英帝国の矜持(きょうじ)がまだ残っていたのである。

 私に限らず日本人はみな、日英同盟の廃止が日本の孤立化のきっかけになったことに、何の異論も挟まないと思う。あの当時においても、たとえば渋沢栄一などは日英同盟の廃止に強烈な危機感を抱いていた。その危機感は、渋沢自らワシントンにまで足を運び、同盟の継続を訴えたほどのものであった。
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