本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ワシントンに赴き日英同盟破棄に反対した渋沢栄一の危機感
本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(10)日英同盟廃棄という致命的な失敗
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)

講義一覧を見る▼
1921年、日本、アメリカ、イギリス、フランスの四カ国条約により、日英同盟の廃止が決定された。この廃止はアメリカが強く主張したものであり、その後の日本の孤立化の契機となった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第10話。
時間:6分24秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年8月17日
≪全文≫
 ところが、ワシントン会議の本当の意味は、軍縮条約と並行して採択された条約や決議にあった。

 その最大にして最悪のものはいうまでもなく、日英同盟が廃棄され、日英米仏の四カ国条約が結ばれたことである。

 日英同盟の廃止の口実は、たしかにあった。元来、日英同盟はロシアに対する日本の防衛のために結ばれたものだったから、革命でロシアが滅んだ以上、日英同盟は必要ないという理屈である。

 またアメリカが、ロシア革命をあまり危険視していなかったことも大きい。アメリカはロシアで共産党が革命を起こして皇帝一族を根絶やしにし、帝政ロシア時代の債務の不履行を一方的に宣言しようが、ほとんど直接的な被害を受けなくてすむ国だった。しかも一般のアメリカ人は「ボルシェビキは皇帝を倒し、あの国を共和制にした」といわれれば納得した。実際には共産党の独裁だからまったく違うのだが、とりあえず「帝政を倒した共和制」という言い方をすれば、アメリカと同じ政治体制の国になるわけで、同情的な気持ちにもなる。

 日英同盟を廃止すべきだと強く主張したのは、アメリカとカナダだけであり、イギリスは同盟廃止をとりたてて主張していない。

 アメリカからすれば日英同盟がある限り、アメリカが日本と戦うことになったら、イギリスは日本の味方となる。そうなるとアメリカは、太平洋と大西洋という両面から挟み撃ちされることになる。そのような事態は、アメリカとしては何としても避けねばならぬことだった。しかも、そもそも日英同盟の主敵であったロシア帝国もドイツ帝国も第一次世界大戦で崩壊したので、アメリカからすれば、日英同盟の矛先が自分自身に向けられているような感覚にとらわれることとなった。しかも日本は、日英同盟を笠に着て、アメリカが進出したくてたまらない中国に対し、好きなように振る舞っているようにも見えた。

 だがイギリスは、かつて自らが決定した同盟政策を自分から取り下げるようなマネはしなかった。大英帝国の矜持(きょうじ)がまだ残っていたのである。

 私に限らず日本人はみな、日英同盟の廃止が日本の孤立化のきっかけになったことに、何の異論も挟まないと思う。あの当時においても、たとえば渋沢栄一などは日英同盟の廃止に強烈な危機感を抱いていた。その危機感は、渋沢自らワシントンにまで足を運び、同盟の継続を訴えたほどのものであった。
...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
中島隆博
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平

人気の講義ランキングTOP10
「アカデメイア」から考える学びの意義(4)学びの3つのキーワード
より良い人生への学び…開かれた知、批判の精神、学ぶ主体
納富信留
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
編集部ラジオ2025(19)堀口茉純先生の「講義録」発刊!
著者が語る!『『江戸名所図会』と浮世絵で歩く東京』
テンミニッツ・アカデミー編集部
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
日本のエネルギー政策大転換は可能か?(1)原発最大限活用の根拠と可能性
第7次エネルギー基本計画とは?原発活用方針の是非を問う
鈴木達治郎