本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死
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大正デモクラシーにも影響を与えたといわれるドイツの書物
本当のことがわかる昭和史《2》軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(2)シビリアン・コントロールを知っていた木越安綱
渡部昇一(上智大学名誉教授)

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大正初期の1913年、内閣をも潰してしまう軍部大臣現役武官制の規定が削除された。シビリアン・コントロールを理解していた陸軍大臣・木越安綱中将の「ガッツ」によるものだ。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第2話。
時間:5分56秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年8月17日
≪全文≫
 第三次桂内閣は評判こそ悪かったものの、さすがの桂だけに、このときも非常に良いことをしている。それは陸軍大臣に木越安綱(きごしやすつな)中将を任命したことだ。

 木越中将は金沢生まれで陸軍の教導団出身である。陸軍教導団とは明治4年(1871)から明治32年(1899)まで置かれた、下士官を養成する教育機関である。木越中将は一兵卒として陸軍に入隊したが、成績が優秀だったので教導団に入り、そこでも頭角を現わしたため、陸軍士官学校に進んだ。士官学校でも優秀な成績を収めている。木越中将はドイツ留学後に桂太郎とともに軍政改革に尽力したあと、日清戦争(明治27年〈1894〉~28年〈1895〉)では第三師団長・桂太郎のもとで参謀長を務め、功績を上げている。その後、もちろん日露戦争でも大活躍をしているが、桂太郎としては旧知の木越中将を気の置けない後輩として陸軍大臣に抜擢したのであろう。

 桂内閣はわずか3カ月で倒れてしまうが、その後に発足した第一次山本権兵衛内閣(大正2年〈1913〉2月20日~3年〈1914〉4月16日)でも、山本首相は木越中将を陸軍大臣に留任させている。

 先にも述べた通り、二個師団増設問題で上原陸相が辞職し、第二次西園寺内閣が倒れたことから、国会から「軍部大臣が内閣を潰せるようなことでいいのか」という声が上がった。山本首相も国会での質問に対して、「それはやはりまずいのではないか」と答えているが、軍部の同意がなければ話にならない。そこで山本首相が相談したのが木越陸相であった。

 木越中将は、当時、陸軍の医務局長だった森鷗外と公私にわたる親交があったといわれる。東京大学名誉教授の小堀桂一郞氏は、森鷗外と木越中将を結ぶものがクラウゼヴィッツの『戦争論』ではなかったかといっている。

 一般にはあまり知られていないが、クラウゼヴィッツの著書『戦争論』はいわゆる文民統制論である。『戦争論』には、「戦争は政略の継続にして他の手段を用いるものなり」という有名な言葉がある。つまり、戦争は形を変えた政治であり、戦争をするのかやめるのかを決めるのは政治であって軍隊ではないということだ。

 そんな『戦争論』を知っていた木越中将はシビリアン・コントロールの原則を理解し、陸軍部内の反対を押し切って、「陸海軍大臣は現役の大将と中将に限る」という規定を削除することに...

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