●本格的な第二次米国革命への舵取りのロジック
ここからは、どうやって本格的な第二次米国革命へ舵取りをするのかを説明します。
トランプ側は、米国政府が反建国理念を掲げる者に支配されると認識しています。スティーブン・バノンのいう「管理国家(administrative state)」が象徴しています。
独立戦争というのは、外国勢力(当時は大英帝国)に対してゲリラ戦や持久戦を仕掛け、政府を転覆したものです。南北戦争のほうは、「奴隷解放か、奴隷制維持か」の議論に基づいた内ゲバが発展した分離運動からなる内戦です。
では現在、2020年の全米の暴動は何かというと、異質勢力=極左ファシズムに対してゲリラ戦的持久戦を仕掛け、政府転覆をはかっています。
このロジックには独立戦争のロジックと共通するものが多く、今起こっている現象に対して「内戦」という表現や「南北戦争の再来」という表現がなされることもあるのですが、それはちょっとピントがズレていると私は思います。
●今のアメリカに「独立戦争」は起こっているのか
本質的に、これは独立戦争のロジックで進められています。前回までに見てきたトランプ氏の表現やいろいろなくだりにも、独立戦争的なロジックが結構組み込まれています。トランプ側は、今の闘争を独立戦争になぞらえて考えています。
独立宣言では、「暴政を行う政府に対する革命」として政府転覆を正当化します。おそらく歴史上、文書として書かれた初めてのものでしょう。
トランプ氏は、選挙戦略の一環で国民に独立戦争を演じさせていますが、実際に独立戦争が起こっているかというと、そうとも言い切れません。「トランプ氏が選挙戦略の一環として演じさせている」という理解が、私は正しいと思います。
トランプの11月再選が第二次米国革命である。革命の目的は原点回帰、つまり建国の精神です。その手段は国内内需型の新たなフロンティア開拓であり、向かう先は中西部、サイバー、宇宙となっています。
●バイデン氏の記念演説に見る民主党の反応
トランプ氏の演説に対して、民主党がどういう反応をしたかというと、まずバイデン候補の独立記念演説について見ていきましょう。
バイデン候補は、ずっと自宅に引きこもったままキャンペーンをしています。これは別にバイデン氏に限ったことではなく、以前説明したウォレン・G・ハーディング候補も、1920年の選挙戦では自宅にこもってキャンペーンを行いました。
バイデン候補は終始自宅に引きこもり、演説はビデオメッセージとしています。トランプ氏の45分演説に対してバイデン氏のほうは1分45秒と、非常に簡潔なものです。彼も独立戦争を引用しましたが、崇高な理想と讃えつつ、起草者で奴隷所有者のジェファソンを徹底的に批判して、過去との決別の構えを見せました。
ここが、民主党の建国の精神の理解とトランプ側の建国の精神の理解の決定的な差です。民主党は、過去との決別で成り立っていますが、トランプ側は過去と現在と未来という連続性があります。
●過去を否定する「進歩主義」か、歴史的連続への感謝か
過去と決別をして新しいものをつくり、また過去と決別をして新しいものをつくる。これは、ウッドロウ・ウィルソンの時代からの「プログレッシヴィズム(Progressivism:進歩主義)」につながってきます。そのような進化論的な理論に則っているのは、アメリカの土着の保守層からすると到底受け入れられない思想です。
独立戦争の理想について、「マーティン・ルーサー・キング(MLK)からジョージ・フロイドにいたる犠牲によって、より平等なものに進化している」と、バイデン氏は訴えました。過去から未来へ一直線に進化するという点、ダーウィンにヒントを得た社会進化論に結構立脚しているわけです。
現代の戦いについては、「米国の魂をかけた戦い」と形容して、独立記念日を祝福するだけなく、「共に行動せよ」とデモを煽っています。ここが、トランプ氏との決定的な差の一つで、バイデン氏はこれを完全に政治闘争の火と見て、直接的に「アクションを起こせ」とアジっているわけです。
トランプ氏は、先祖に対する感謝や歴史の連続性を強調して、個人個人の米国の建国精神に対する感謝と理解を強調しています。トランプ氏のロジックは、特定の政治思想に対して動員するだけのロジックとは少し違うものといえます。
●内政に特化したトランプの演説、日本は大局を見誤らないようにすべし
最後に日本への含蓄に触れますが、トランプ大統領の今回の演説では完全に内政にしか触れていませんでした。外国の名前が出てきた...