「教養とは何か」を考えてみよう
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アーレントが『人間の条件』で提示したことと「永遠の未決性」
「教養とは何か」を考えてみよう(6)自力か他力か
教養は一般的に「身につける」ものと言われるが、本当にそうだろうか。未知の人と知り合うのは、世界の多様性を知ることにつながる。そのとき、人は自分を磨いているのか、人によって磨かれているのか。また、人は安定を求めがちだが、未決や不安定の状態にあることは、変化への無限の可能性を開くことになる。(全15話中第6話)
時間:9分16秒
収録日:2020年10月26日
追加日:2021年6月1日
≪全文≫

●アーレントが『人間の条件』で提示した「多様であること」とは何か


五十嵐 わたしは前回のヘーゲルの話を聞いていて、それは「自力」っぽいなと思って。例えば……。

津崎 「自力」は自分の力ということだね。うん。

五十嵐 そうそう。例えば、ヘーゲルが「自分を普遍だと思ってはいけない」という。それは本当にそうなんだと思う。「自分を高めていかなければいけない」「普遍だと思ってはいけない」のは本当にそうだと思うんだけど、「高めていかなければいけない」というのはどうなのかな、と。

津崎 それはヘーゲルに対して、だね。

五十嵐 そうそう。例えば、ハンナ・アーレント(Hannah Arendt)が「政治」ということについて言っていて。前回「人間という条件」について話したと思うけど。

津崎 モンテーニュの話だね。

五十嵐 そう。アーレントが『人間の条件』を書いているから思い出したんだけど。あの本のなかでは……。

津崎 ほら、教養(笑)。

五十嵐 そう。でもほら、アーレントが教えてくれたから。

津崎 なるほど。

五十嵐 アーレントが「政治というのは多様であることだ」と言っていた。でも、政治というと、わたしたちは普通「組織をどう動かすか」みたいに考えがちでしょ。

津崎 うん。

五十嵐 一つの組織があって、それをどううまく動かせるかというのが政治だと考えがちなんだけど、そうじゃない。では政治は何かというと、「多様であることだ」と言っている。多様であるとは何かというと、自分とは違う他者がいるということ。言い方を変えると、「他者は自分とは違う存在である」ということ。

 また別の言い方をすると、前回「生む」という言葉が出たんだけど、わたしとは違う生まれ方をしている相手がいるということ。だから、どんな人と会っていても「わたしはまだ知らない」と思わないといけない。どうしてかというと、事実問題として違うから。今日もこうしてマイクとお話をするのが楽しいのは、「知らない」からなの。

 わたしが「知らない」と思えるから、楽しい。もしわたしが「知っている」と思ったら、その瞬間にマイクはわたしにとってはもう一つの「知識」になってしまって、今会って楽しい、「知りたい」人ではなくなってしまう。そういうふうに思うと、ヘーゲルが言った、「どんどん自分を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政