「教養とは何か」を考えてみよう
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教養は公共財なのか、プラトンの書かなかった「ある事柄」
「教養とは何か」を考えてみよう(11)教養はみんなのもの
プラトンの『第七書簡』には「書かれることのない事柄」についての言及がある。文字では伝わらず、共同体における共同生活と共同探求のなかでしか伝わらない事柄。それが哲学であるとすれば、教養は個人が所有するものと言えるだろうか。それは「散歩」や「遠足」のようなものだと五十嵐氏は言う。(全15話中第11話)
時間:9分15秒
収録日:2020年10月26日
追加日:2021年7月6日
≪全文≫

●プラトンの書かなかった「ある事柄」とは何か


津崎 プラトン(Platon)が『第七書簡』のなかで「ある事柄」について論じている。彼はそれを「ある事柄」としか言わないんだけど、「自分はこれまでもこれからも、その事柄について本は書かない」と言っている。他の学問についての本はたくさんあるけれども、人から言われても、その本は書かないんだ、と。

 「この事柄」というのは、語ることができない。語ることができないから「この事柄」だ、とも言う。それは、絶え間ない共同の探求と共同の生活のなかでしか手に入らない、と。彼は、このように言うんです。「その後、ある人の魂にともったその炎が、他の人の魂に点火していくようにして……」。

五十嵐 ほんとそう。

津崎 その「ある事柄」というのが「哲学」なんだ。つまり、共同体というのは、一方でそのためにわたしたちは偏見を授けられるけれども、そのおかげでポルトマンの言葉を使うならば「社会的子宮」のなかでヒトから人間になっていくわけだよね。

五十嵐 うん。社会性を身につけてね。

津崎 そう。しかし、その共同体のせいでわたしたちは自分を見失うわけだけど、その共同体のなかでしか僕たちは、プラトンが言ったような共同生活と共同の探求も営めない。哲学を一緒にやっていく対話相手も見つからない。そうすると結局、教養はわたし一人では絶対に身につけられないということになるよね。

 ということは、教養は公共財、公共のもの、みんなのもの、わたしたちのもので、「あの人は教養がある」とか「わたしは教養がある」というのは、教養の真の在り方からすると本当に正しい言い方なんだろうか。教養とは、共同の精神活動それ自体のことなのではないか。どこかにあってそれを身につけたり、誰かに差し上げたり、教え授けたりするものではなく。一緒にというと、どういう仕方か、というのはたぶんいろいろあるだろうね。それが「対話」なのか何なのか分からないけれども、とにかく何か一緒につくり上げていくようなものなのではないか、と。


●基準をつくった昔の人たちの声に耳を傾けよう


五十嵐 そうね。散歩?

津崎 散歩?

五十嵐 遠足?

津崎 遠足?

五十嵐 そう。ずっと定住していて、同じところでずっとそ...

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