百人一首の和歌
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
百人一首の皇嘉門院別当の歌は奇跡的なまでに技巧的
百人一首の和歌(4)皇嘉門院別当
渡部泰明(東京大学名誉教授/国文学研究資料館館長)
東京大学大学院人文社会系研究科教授の渡部泰明氏による百人一首に関するシリーズレクチャー。今回取り上げる皇嘉門院別当は在原業平、和泉式部と比して知名度は圧倒的に劣る。また、歌人としても当代随一の実力派というほどではないと渡部氏は言う。では、なぜ皇嘉門院別当の歌は百人一首に選ばれたのか。(全5話中第4話)
時間:11分52秒
収録日:2018年4月2日
追加日:2018年6月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●百人一首に選ばれた皇嘉門院別当の歌は奇跡的なまでに技巧的な歌


 それでは次に皇嘉門院別当の歌を取り上げてみたいと思います。

 皇嘉門院別当と聞いて、「ああ、あの人ね」と分かったら、かなり和歌に通じている人ではないかと思います。これまで取り上げた在原業平や和泉式部に比べれば、断然知名度は劣ります。要するにほとんど無名に近い歌人といってもいいのではないかと思います。もちろん当時はそれなりに名は通っていましたけれども、生没年も分かりません。当時の権力者・藤原忠通の娘であり、崇徳天皇の皇后になった人が皇嘉門院聖子です。聖子は「せいし」あるいは「しょうし」と呼んだのでしょうけれども、その別当です。別当というのは皇嘉門院という人の女房(宮中に仕える女官)であった人のことです。その歌はこちらになります。

 難波江の葦のかりねの一夜ゆゑ身をつくしてや恋ひわたるべき

 「芦の茂る難波の入り江でたった一晩かりそめの枕を交わしただけで、命をかけて恋い慕い続けなければならないのでしょうか」という歌です。前回、和泉式部の歌を『百人一首』の中でも最も情熱的な歌と言いましたけれども、私は今回の歌は、『百人一首』の中でも最もうまい歌の一つに押したい歌です。大変うまい。もっと強調するなら、奇跡的なまでに技巧的な歌だと思います。一体どういうことか、その説明をしていきたいと思います。


●「逢ふ恋」を詠む難しさ


 例によってまた『百人一首』には詞書はありませんから、この歌が載っている『千載和歌集』に戻ります。7番目の勅撰和歌集です。その勅撰和歌集である『千載和歌集』の中では、こう詞書が付いています。

 摂政右大臣の時の家歌合に、旅宿に逢ふ恋といへる心をよめる 皇嘉門院別当

 摂政右大臣は九条兼実という人です。この皇嘉門院のお父さんであった忠通の息子なので、皇嘉門院とは兄妹です。九条兼実は和歌にも大変通じていましたし、また和歌のパトロンとしても大活躍した人です。この人が右大臣であった時に歌合せを催しました。

 歌合せはご存じでしょうか。簡単に説明すると、歌と歌を戦い合わせる、歌でやる相撲のようなもので、遊戯的な文芸です。歌合せには必ず題があります。これは「旅宿に逢ふ恋」という題で詠んだ歌なのです。「旅宿に逢ふ恋」とは、旅の宿で出会った、少し運命的、あるいは行きずりともいえる、そ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
中世ヨーロッパの基礎的な学問「7自由学科」の一つが音楽
樋口隆一
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
『ロビンソン・クルーソー』とは何か(1)読み続けられる18世紀の小説
なぜ『ロビンソン・クルーソー』は“最初の近代小説”なのか
武田将明
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨

人気の講義ランキングTOP10
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(5)美の裏に潜む恐ろしい側面
恐ろしい日本…常に何者かに見られ、個性が抑圧される社会
賴住光子
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
編集部ラジオ2026(7)10分解説!新撰組の魅力とは?
「新撰組」の真の魅力は史実と物語の隙間にあり
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(3)稲作社会と頑張る日本人
ダメなのは「頑張りが足らない」から…うつを招く稲作的発想
與那覇潤
オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え
ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る
水島昇
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
変化する日本株式市場とPEファンド(1)近年急増するPE投資
プライベート・エクイティ・ファンドとは何か…その手法は?
百瀬裕規
「発想力」の技法を学ぶ(2)発見と探究(後編)
セブンカフェ、無印良品…成功事例に学ぶ「デザイン思考」
三谷宏治
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉