神皇正統記と日本人のアイデンティティ
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
天皇の系譜が直系で続かなかった理由とは?
神皇正統記と日本人のアイデンティティ(3)政治の成功に必要なこと
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
政治には何が必要か。そして、政治の成功に必要な要素とは何か。『神皇正統記』全編を貫く北畠親房の志や、王朝交替思想にも触れながら、彼が本書において密かに語ろうとしたこととは何かに迫る。シリーズ「日本の歴史書に学ぶ」第2弾(3/3)。
時間:11分39秒
収録日:2014年3月27日
追加日:2014年10月6日
≪全文≫

●決断とは「理非曲直」の採決


 北畠親房によれば、政治とは正直慈悲を本とするもので、それが本元である。そして政治には決断の力が必要だと言うのです。

 決断とは、「理非曲直」を明らかにすることです。「理非」というのは、そこに「理(ことわり)」があるか、ないか。正当性があるか、ないか。「曲直」とは、曲がっているか、真っすぐか。すなわちどちらの主張の道筋が間違っていて、どちらが正しいか。このことを「理非曲直」と言いますが、それを採ることを決断と彼は言うのです。


●政治の成功に必要な三要素:賢才を選ぶ、公平に領地を分ける、信賞必罰


 では、政治を成功させるために必要な要素は何であるか。第一は、賢才を選ぶ。賢い才能、優秀な人材を選ぶこと。人事が大事で、人材の簡抜が必要だと言うのです。第二は、公平に領地を分けること。私の感情を交えず、公平に恩賞を施すことが大事だと言います。第三は、信賞必罰です。働いたものには報い、働かないものには報いない。根拠のある人への恩賞は篤くするが、そうでない人に恩賞を与える必要はない、あるいは薄くするという信賞必罰です。これらを間違えると、世は乱世となり、乱れた政治になってしまうというのです。


●『太平記』が描き出した後醍醐天皇周辺の乱脈


 このような親房の言わんとしたことについては、『神皇正統記』の中よりも、むしろ有名な『太平記』の中に多くのエピソードを見出すことができます。

 『太平記』には、後醍醐天皇の側近たちや彼の愛した女御たちが、勝手に荘園や武家の領地を取ったりするところがよく出てきます。また、贅沢さもあります。後醍醐天皇の側近であった千草忠顕については、「酒肉珍膳の費え、一度に万銭も尚足るべからず」と、彼の楽しむ酒や料理、珍奇で珍しい山海の珍味を味わうために支出する総額が、万の銭を投じても到底足りないといった贅沢さ加減でした。

 それから、文観(もんかん)という僧正(そうじょう)がいました。この僧侶は「何の用もなきに財宝を倉に積み貧窮を扶(たす)けず」と言われました。何の目的もないのに蔵の中にお金を貯め込んでニンマリする。そして吝嗇(りんしょく)、ケチで、困っている人がいてもそれに耳や目を傾けて助けようとはしない。このような僧侶、宗教者、こうした人物がわが物顔で天下を闊歩していることに触れています。

 もっとひどいのは、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
AI時代と人間の再定義(7)AIと倫理の問題と法整備の可能性
人間のほうがAIに寄ってしまう?…関係性と倫理のあり方
中島隆博
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
こどもと学ぶ戦争と平和(1)私たちに必要な想像力と戦争体験
なぜ戦争が起こるのだろう…大切なのは想像力と生の声
小原雅博
編集部ラジオ2026(2)「時代の大転換期の選挙」特集を解説!
「大転換期の選挙」の前に見ておきたい名講義を一挙紹介
テンミニッツ・アカデミー編集部
おもしろき『法華経』の世界(10)未来への智慧と希望
「未来応化=どんな未来も大丈夫」…ブレない臨機応変の力
鎌田東二
逆境に対峙する哲学(8)白隠の覚悟
宮本武蔵「型を捨てろ」と「守破離」が教えてくれること
津崎良典
これからの社会・経済の構造変化(4)日本企業の課題と組織改革の壁
日本の場合、トップダウンよりボトムアップで変えるべき?
柳川範之
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
会計検査から見えてくる日本政治の実態(3)戦後初となる補正予算の検査
繰越金が4割も…戦後初「補正予算の会計検査」の実態
田中弥生