神皇正統記と日本人のアイデンティティ
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
『神皇正統記』の内容とは…3つの重要な要素
神皇正統記と日本人のアイデンティティ(2)正直・慈悲・決断
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
『神皇正統記』の歴史観・世界観を支えるのは「正直・慈悲・決断」の三要素である。この三つに照らした本書における北条泰時への評価や、承久の乱に対する解釈に触れつつ、建武の新政の挫折の原因について、北畠親房がいかなる反省を試みたのかを探る。シリーズ「日本の歴史書に学ぶ」第2弾(2/3)
時間:9分55秒
収録日:2014年3月27日
追加日:2014年8月28日
≪全文≫

●「正直・慈悲・決断」は政治的な立場を超える


 『神皇正統記』の歴史観・世界観には、揺るぎない筋が通っています。それは、三つの重要な要素に支えられながら歴史を見ようとしているところです。一つは正直、一つは慈悲、一つは決断という要素です。

 北畠親房は、政治的な立場がどうであれ、歴史はこの「正直・慈悲・決断」の三つの要素に依拠することによってきちんと見なくてはならないし、責任を持たなければならないことを、筋道立てて書こうとしました。

 南朝方の最も重要なリーダーでありながら、南朝方がかくのごとき悲運と不幸に遭っている原因が自分たちの中にもないだろうかと、真摯に反省している書物でもあります。

 また、鎌倉幕府がいったん滅びたにもかかわらず、足利幕府として再建されたのは、武家方には、政治的な支持を受けるだけの徳望や支援を受けるだけの根拠があったのではないかと考えています。こういう点についても、真面目に反省しようとした書物なのです。

●北条泰時への評価の公正さ


 こうした問いかけは、おのずから『神皇正統記』のあちらこちらに顔を出しています。中でも私にとって印象的なのは、他ならぬ後醍醐天皇が倒した鎌倉幕府の第三代目の執権、北条泰時に対する評価の公正さです。

 北条泰時は、前回ご紹介した『吾妻鏡』で触れた北条義時の子どもです。政所の執権、すなわち鎌倉幕府政治の事実上の最高責任者として、幕政をつかさどった泰時についての親房の評価はすこぶる公平で、およそ次のように言っています。

 北条泰時は朝廷の意思を重んじ、地頭(地方の武家の徴税人、支配者)の欲しいままな暴虐や欲しいままなまつりごとを禁止したために、北条の名、世代においては兵乱も起きず、そして天下も安定した。

 父親の義時はさしたる才能もなかったけれども、義時が死んだあと、子どもの泰時は善政をしき、法や御成敗式目(貞永式目)を制定して、自分も他人もともに戒めた。すなわち法の支配を徹底した、と言うのです。

 ところが北条の政権は、このような泰時をもってしても、ついには滅びざるを得なかった。これはやはり「天命」というものに他ならないと、彼は歴史観を語ります。

 しかし、北条の政権すなわち義時の得宗家が7代も続いたのは、泰時の「余徳」であり、彼のさまざまな権威や努力によるものであるから、幕府が滅びたから...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
独裁の世界史~ギリシア編(1)世界史の始まり
「独裁政から始まる」という世界史の諸相に迫る
本村凌二
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
20世紀前半の日中関係~この歴史から何を学ぶか(1)
極東の小国が旧超大国・清に挑戦した日清戦争
島田晴雄
明智光秀の真実(1)謎につつまれた前半生
明智光秀は「主殺しの悪人」か?…諸説入り乱れる人物像の謎
小和田哲男
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜

人気の講義ランキングTOP10
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
ウェルビーイングを高めるDE&I(5)心理的安全性の高い組織づくり
無知、無能、邪魔!?…心理的安全性を阻害する5つの要因
青島未佳
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(6)賃金の未来シナリオ
AIが人間の仕事を「完全代替」したらどうなる?…仕事と賃金の未来
宮本弘曉
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
小原雅博
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆