神皇正統記と日本人のアイデンティティ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「神皇正統記」は日本人のアイデンティティを問う書物
神皇正統記と日本人のアイデンティティ(1)日本国とは何か
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
中世の代表的な史論書として、後世の日本人の歴史観にも大きな影響を与えたと言われる『神皇正統記』。作者の北畠親房や本書の特徴、執筆の背景等について、山内昌之氏が解説する。シリーズ「日本の歴史書に学ぶ」第2弾(1/3)。
時間:13分42秒
収録日:2014年3月27日
追加日:2014年8月21日
≪全文≫

●『神皇正統記』は日本と日本人のアイデンティティを問う書物


 今日は、日本の歴史書について語るシリーズの二番目として、北畠親房の『神皇正統記』についてお話ししてみたいと思います。

 『神皇正統記』は、基本的に言うと「日本国とは何か」について考えようとした書物です。「日本(やまと)とは何か」、そして「日本人とは何か」という、私たちの先人たちのアイデンティティを考え、苦闘した歴史書です。

 作者の北畠親房は、後醍醐天皇に仕えた日本の代表的な政治家の一人です。政治家である彼は、「政治責任とは何か」を歴史に即して考えようとしました。そして、その答えを求めるために『神皇正統記』を書き上げたのです。

 この本はときには切実な反省の響きを伴います。「なにゆえに後醍醐天皇による建武の新政、建武の中興は失敗に終わったのか」、「なにゆえに南朝は北朝や足利尊氏、ひいては足利の武家政権に屈することになったのか」、このようにして歴史の筋道、歴史の道理について考えようとしたのです。


●著者は当代きっての政治家・知識人だった北畠親房


 この歴史書『神皇正統記』は、古代の神話と伝承の時代、すなわち初代の神武天皇から、14世紀の後醍醐天皇、ひいては後村上天皇に至る日本史を、年代記風に扱っています。しかしながら、本書は同時に「国家とは何か」という国家のレゾンデートル、存在理由についても書かれた、ある意味では現代においても興味を非常にそそる政治の書、政治学的に見ても大変興味深い書物になっています。

 それは、著者の北畠親房がただ単なる政治家であったのみならず、当代きっての知識人、真言密教、真言宗や神道、特に伊勢神道に通じた有数の文化人でもあったからです。また、そうした知識が書斎のブッキッシュなものに限られるのではなく、実際に彼は後醍醐天皇の南朝における柱石として、孤立し、そして孤軍奮闘しなければならなかった政治家でもあったという点に、この書物の迫力を感じさせるバックグラウンドがあるのではないかと思います。


●「天皇家による皇統が絶えず伝わる世界でも唯一の国」という自負心


 この書物の書き出しはすこぶる簡潔です。それは、「大日本者神国也(おほやまとはかみのくになり)」(大日本は神国なり)という言葉で始められます。書き出しはすこぶる簡単明瞭ですが、その世界観や政治哲学の基本は全て、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
独裁の世界史~ギリシア編(1)世界史の始まり
「独裁政から始まる」という世界史の諸相に迫る
本村凌二
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
編集部ラジオ2026(30)AI時代の企業と道徳
【10minで考える】CPO(最高哲学責任者)…AI時代に必須の哲学とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(6)リベラルアーツの本質
自分にしかできない自分の世界を味わうために、他の人とつながる
橋爪大三郎
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(4)5人の皇帝と現代中国
特筆すべき5人の皇帝…中国史を知らなければ現代中国もわからない
宮脇淳子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
不便益システムデザインの魅力と可能性(2)不便がもたらす4つの益
写ルンです、おやつ300円まで…不便がもたらす益の数々
川上浩司