吾妻鏡とリーダーの要諦
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
源頼朝の死因?北条時頼の廻国?…『吾妻鏡』の謎と魅力
吾妻鏡とリーダーの要諦(4)事実と虚構のはざまから
歴史と社会
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「いざ鎌倉」で知られる謡曲『鉢木』の佐野源左衛門と、水戸黄門の諸国漫遊はルーツを同じくした? 理想化された「武家の世界」伝承が、事実と虚構のはざまを一人歩きするにいたるプロセスを、山内昌之氏が追いかける。シリーズ「日本の歴史書に学ぶ」第一弾。(4/4)
時間:10分17秒
収録日:2014年2月26日
追加日:2014年4月24日
≪全文≫

●最明寺入道・北条時頼の「廻国伝説」


 鎌倉と江戸をつなぐ例の三番目は、江戸時代につくられた事実とフィクションとの境界にまたがるある種の伝説についてです。これがやはり鎌倉時代にもあった。むしろ江戸時代のそれは、鎌倉時代のものに通じたのではないかというお話をします。

 例えば、最明寺入道・北条時頼のエピソードです。時宗の父、時頼は執権を辞め、入道、すなわち出家をします。その後、全国を回ったということで「廻国伝説」が残っています。その中に、謡曲『鉢木』の主人公となった佐野源左衛門尉常世との出会いなどがあります。
 

●『鉢木』のモチーフは法治主義と善政


 源左衛門は零落した御家人でした。ある日、旅の僧が泊まりに来るのですが、もてなす術もないほど非常に貧しい暮らしをしていました。それは自分の土地、すなわち「本貫地」が残念ながら人の手に渡ってしまったからであること、法的にはこちらが正しいことなどを、彼はその僧が最明寺時頼であるとは知らずに打ち明けて語り、時頼はそれを聞きます。その時に、「もてなすご馳走もできませんが」と言って、自分の大事にしていた鉢植えの木を割り、それをくべて暖をとらせ、旅人をもてなしました。それが『鉢木』のモチーフとなった伝説・伝承だったのです。

 この最明寺時頼と佐野源左衛門のエピソードは、後に時頼が鎌倉に戻り、まさに「いざ鎌倉」の言葉通りの非常事態を迎え、時頼が発した命令に応じて、関東の各地から武士が駆けつけますが、その中でも真っ先に駆けつけてきたのが、この下野の住人、佐野源左衛門だったのです。その後、源左衛門の本貫地についての調べがなされ、土地はめでたく彼の元へ戻ります。これはすなわち幕府の法治主義と善政のあり方を強調するお話です。強調された法治主義と善政が、後世に伝承として伝えられます。


●時頼の廻国は「正義の味方」水戸黄門へ


 この話が何を思い出させるかと言うと、まさに水戸光圀、すなわち水戸藩のご老公が水戸黄門として諸国を漫遊した話です。格さん助さんをお供に従えて漫遊した光圀は、行く先々で悪を懲らしめ、正義を勧めていく。これは、当時の人々の持っていた願望だったのでしょうね。世にはびこる不正を在地で訴えても、なかなか解決できない。そんなとき、上から正義の味方が現れ、正義を行使することを期待する。そんな面があったのだと思います...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平

人気の講義ランキングTOP10
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(5)世直しクーデターとその成功条件
歴史のif…2.26事件はなぜ成功しなかったのか
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー
国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
生成AI「Round 2」への向き合い方(6)生成AIとともに働くCopilot活用法
劇的に時短!企画書、議事録、資料管理…Copilot活用法
渡辺宣彦