吾妻鏡とリーダーの要諦
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『吾妻鏡』は鎌倉幕府の何を描くための歴史書だったか?
吾妻鏡とリーダーの要諦(2)その執筆の意図を探る
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
『吾妻鏡』は鎌倉幕府の正史ではなく、編年体で書かれた将軍年代記であり、「源氏に厳しく北条に甘い」という特徴を持つ。そこに込められた書き手の意図と、必然とも言える『吾妻鏡』終止符の意味を解き明かす。シリーズ「日本の歴史書に学ぶ」第一弾。(2/4)
時間:11分08秒
収録日:2014年2月26日
追加日:2014年4月17日
≪全文≫

●将軍年代記であっても鎌倉幕府の正史ではない


 この書物『吾妻鏡』は、一体、誰がいつ書いたのかというのは、多くの謎に包まれております。二つの説があり、14世紀に書かれたという説を挙げる専門家たちがいます。もう一つは、二つの時代に分けて書かれたのではないかという説があります。すなわち、前半部については13世紀後半、後半部については14世紀初頭ではないかという二段階説をとっている学者もいます。

 しかしながら、この書物の特徴は、誤解してはなりませんが、実は鎌倉幕府の正史、つまり鎌倉幕府がはっきりと年代が分かる形で、誰かに命じてこの歴史を書かせたという、そういう意味での公式な歴史、オフィシャルヒストリーではないという点が大変重要なのです。

 この書物をよく見ていきますと、文章は編年体、すなわち、かつての日本の公式の歴史であった六国史、『日本書紀』や『続日本紀』から『文德実録』『三代実録』に至る公式の歴史と同じように、つまり天皇によって分けて歴史を書いたのと同じように、将軍職や将軍の交代を一つの基準にして歴史を書いているという年代記の形をとっています。


●源氏三代将軍には厳しい評価を下す


 さらにこの書物は、実は独特な和様調の漢文体で書かれていて、非常に不思議なリズムを持っている本なのですが、これを読んでいきますと、次のことが分かります。

 結論から申しますと、第一に源氏の三代の将軍に対してその評価が非常に厳しいということ。それに対して、二番目に、北条義時以降の北条得宗家の執権政治に対しては非常に甘く評価が高いという特徴が挙げられます。

 第一の特徴とは、これは例えば、二代将軍の源頼家は自分の家来、御家人が愛でている女性を奪いとったとか、蹴鞠に凝ったりして政治を顧みなかったというような調子で書かれています。また、源実朝は日本の文化史にも残る『金槐和歌集』を編纂し、私たちは彼を歌人としてよく知っているわけですが、その実朝が和歌に熱中しすぎ、そして後鳥羽上皇に対して忠誠を誓うあまり、鎌倉、東北の御家人たちのことを気にとめない公家肌の人物だった。すなわち、暗黙のうちに実朝は武人ではないというニュアンスで書かれたりしているのです。

 蹴鞠や和歌というのは、本質的に言えば、これは公家のものとして東国の武士たちは考えていました。たしなみや教養の基礎としては蹴...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ