吾妻鏡とリーダーの要諦
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「吾妻鏡」が徳川家康に与えた影響とは?
吾妻鏡とリーダーの要諦(3)徳川家康への影響と効果
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
『吾妻鏡』は、後世にいろいろな効果を及ぼしていく。第一に数えられるのは徳川家康への影響だ。将軍頼朝を補佐した「御門葉」は、徳川では「御三家」に姿を変え、官職では「二人制」の知恵が引き継がれる。シリーズ「日本の歴史書に学ぶ」第一弾。(3/4)
時間:7分45秒
収録日:2014年2月26日
追加日:2014年4月24日
≪全文≫

●得宗家・金沢貞顕の統括で家臣団が書いた?


 では、誰が一体この本を書いたのか。もはやこれはほとんど明らかになっていると思います。明らかと言いましたが、実際にはまだはっきりと確定はされていません。明らかになったのは「推測」という部分のプロセスです。

 おそらく得宗家の一員で、「被官」と呼ばれる家臣の誰かが、多分一人ではなくて複数で書いたのだろうと言われています。そして、全体を統括した人物については、一つの考えとして金沢貞顕の名が挙がっています。すなわち、金沢流の北条貞顕だったという説が、今では有力視されています。

 金沢といえば、あの有名な「金沢文庫」です。貞顕は金沢実時以来の金沢文庫に関わりのある、北条の由緒ある諸流でした。読書、文書、貴重な録書などを通して、多くの教養や知恵を持っていた北条一門の一つであることから、このような推測に至る人もいるのです。

 こうした人たちにより書かれた『吾妻鏡』は、もちろん自分たちの北条家すなわち得宗社会を正当化するために書かれたものでしたが、図らずもこれが後世に、いろいろな点で多くの影響やその効果を及ぼすことになりました。


●頼朝の「御門葉」と家康の「御三家」


 第一に、徳川家康がこの本を愛読した結果について、ある専門家による説があります。『吾妻鏡』には、源頼朝が将軍の「藩屏」すなわち将軍を助けていく身内として、血のつながる清和源氏の流れから八人を「御門葉」として選んだ、とあります。そして、彼を政治的に補佐した「政所」などのリーダーの一人であった大江広元をはじめとする四人を「准門葉」と位置づけたと書かれています。

 ここで思い出すのは、徳川幕府、あるいは徳川家における「御三家」の存在です。家康は、頼朝からの三代で源家が滅び、血筋や血統が絶えたことを、歴史の教訓として大変大きく刻んだのだと思います。

 そこで、家康―秀忠とくる嫡流が仮に絶えるような事態があった場合のために、「御三家」を活用しようと考えました。この嫡流は実際にもその後、家光―家綱と続いた後、五代将軍の綱吉のところで横の枝葉に入ります。「枝葉」というのは、長子・嫡子でない流れを指します。綱吉も家光の血は継いでいるものの、長子ではありませんでした。さらに家宣―家継の後の八代将軍に、紀州家から吉宗が入ったことは、ほとんどの方がご存じだと思います。

...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
いま夏目漱石の前期三部作を読む(9)反知性主義の時代を生き抜くために
なぜ『門』なのか?反知性主義の時代を生き抜くヒント
與那覇潤
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生