吾妻鏡とリーダーの要諦
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
吾妻鏡―中世を掌握した鎌倉武家政権の一大年代記
吾妻鏡とリーダーの要諦(1)魅力と謎に満ちた書物
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
鎌倉時代の武家政権の歴史を扱った書として知られる『吾妻鏡』。実は現代の政治家にこそ読んでほしいと、山内昌之氏がその魅力と謎に迫る。シリーズ「日本の歴史書に学ぶ」第一弾。(1/4)
時間:7分25秒
収録日:2014年2月26日
追加日:2014年4月17日
≪全文≫

●魅力と謎に満ちた『吾妻鏡』の持つ意味とは?


 皆さん、こんにちは。

 これから機会を捉えまして、日本の歴史、むしろ日本の歴史書、歴史家とは何だったのかということについて、少し古典などの紹介を交えてお話してみたいと思います。

 今日はその第一回目としまして、『吾妻鏡』についてお話してみたいと思います。

 『吾妻鏡』はご存知の方も多いかと思いますが、鎌倉時代の歴史を扱った書物です。しかし、この書物は魅力的な本であると同時に、大変多くの謎が含まれている歴史書でもあります。

 まず、この書物はいつ作られたのか、あるいは誰が作ったのか、そして、何のために書かれたのか、こういうことがまだ専門家によっても十分に結論が出ていない不思議な謎の書なのです。また逆にいうと、そこに大変多くの魅力のある書物でもあるのです。

 『吾妻鏡』がまず問題になるのは、そして現代の私たちにとっても重要なのは、この書物が武家政権がつくられた鎌倉を中心にして、東国の歴史や東国を基盤とした日本で最初の武家政権の政治権力の意味を問い、そこで繰り広げられた鎌倉幕府のありさまを後世に伝えてくれている点です。すなわち、この書物は日本でほぼ最初の武家の本格的な年代記としての意味を持ち、東国において武家政権をつくり、権力の場所をつくった武士たちが中世という時代を担ったことや、それに関わる証明の書であったのです。つまり、武家が鎌倉を中心にして新しい歴史をつくった時に、彼らはそれをどのように記録しようとしたのか、ということです。またこの点においては、私たちが後世の徳川の時代、江戸時代という武家政権のクライマックスを考える際にも、大変大きな歴史の流れの中で考察する必要がある書物になっています。


●現代政治の手掛かりとなる『吾妻鏡』の魅力


 『吾妻鏡』はなぜ今にまで多くの人々が関心を持っているのかといいますと、やはり徳川家康の影響が大きいと思います。徳川家康は江戸に幕府を開いた時、当然彼は尊敬すべき先人として、源頼朝が同じ東国の鎌倉に幕府を開いたという故事を参考にしたはずです。

 その際、この鎌倉幕府の先例に倣い、頼朝のさまざまな故事、あるいは彼の成功や失敗、これらを教訓として学ぶことによって、江戸幕府の経営に向かったに違いありません。そのようなことを知る上で非常に重要な書物が、この『吾妻鏡』なの...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建