百人一首の和歌
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
在原業平の一首が背負う「物語」とは?
百人一首の和歌(2)在原業平
渡部泰明(東京大学名誉教授/国文学研究資料館館長)
いくつもの謎を抱える日本古典の代表『百人一首』を、日本文学研究者で東京大学大学院人文社会系研究科教授の渡部泰明氏に案内いただくシリーズレクチャー。第2回からは個別の歌人と選ばれた作品の謎に迫っていく。今回は、美男の貴公子として名高い在原業平の一首を取り上げる。(全5話中第2話)
時間:14分28秒
収録日:2018年4月2日
追加日:2018年6月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●高貴な貴公子、業平の代表歌が「この一首なのか」という疑問


 今回の講義では、百首全部の歌を読みたいところですが、とてもその時間がありません。大学の授業では一首につき最低でも90~100分かけたりします。ここではさすがにそれではゆっくり過ぎますので、数人の歌人を取り上げて、その解釈の問題点について考えていきたいと思います。

 まず登場してもらうのは、在原業平という歌人です。もちろんご存じでしょう。『伊勢物語』の主人公になぞらえられた人で、『伊勢物語』には業平とは書かれず、「昔男(むかしをとこ)」とされています。が、業平の多くの歌を、その「昔男」も同じく詠んでいるので、業平がモデルであるのは明らかです。

 業平は、825年に生まれて880年に亡くなる9世紀の人です。お父さんは、阿保(あぼ)親王。おじいさん、つまり阿保親王の父は平城天皇。お母さんは桓武天皇の皇女である伊都(いと)内親王です。血筋から言えば完全に理想的なる天皇家の血筋を濃く引いていますが、「在原」という名字をもって臣下に列しています。

 さて、大変有名な在原業平の歌として定家が選んだ一首は、この歌です(落語のネタにもなっていますが、それは少しおいておきましょう)。

 ちはやぶる神代も聞かず竜田川韓紅 (からくれなゐ)に水くくるとは
 (神代にも聞いたことがない。竜田川で韓紅色に水をくくり染めにするとは)

 これに関して、「あの有名な業平の一首が、この歌だろうか」という疑問は、大変多くの人が寄せています。しかし、よくよく考えると、業平の歌としてこれを選んだ定家の見識は、なかなかやはり深いものがあるのではないかと思わせます。


●「くくるとは」で描き出される、鮮やかな水面


 この歌は、どんな時に詠まれたのでしょうか。「神代にも聞いたことがない」からは大げさな感じが伝わりますし、「くくる(くくり染めにする)」は、「纐纈 (こうけつ)染め」のこと。布の一部を糸でくくって染めますから、丸い模様がぽこぽこできる状態になります。

 つまり、竜田川の上に散る紅葉が、くくり染めのようにまだらをなしているわけです。ある所にぽかっと丸く赤い紅色の輪っかができ、こちらにもあちらにもできている状態を詠んだものです。

 実は、この部分には少し問題があり、藤原定家はそう解釈していないことがはっきりしています。定家は「くぐる...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
クラシック音楽で世界史がわかる…宗教音楽からクラシックへ
片山杜秀
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
「万葉集」の聖徳太子――語りかける人(1)日本人の憧れ
聖徳太子と日本人…「実在しなかった」説の真相とは?
上野誠
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二
司馬遼太郎のビジョン~日本の姿とは?(1)1923年生まれの3人の作家
司馬遼太郎と日本人…まず遠藤周作、池波正太郎との比較で考える
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(2)教義の宗教と覚りの宗教
キリスト教は教義の宗教、仏教は覚りの宗教…仏教はなぜ普遍宗教か
橋爪大三郎
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
編集部ラジオ2026(28)自由喪失の危機に考えるハイエク-1
斎藤幸平氏に物申す…自由喪失の危機に読みたい自由主義の近現代史
テンミニッツ・アカデミー編集部
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(5)持続可能な天下泰平の制度設計
関ケ原はトップ官僚・石田三成と中央集権体制をつぶす戦い
片山杜秀
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介