和歌のレトリック~技法と鑑賞
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
百人一首に多く使われている「縁語」というレトリックとは
和歌のレトリック~技法と鑑賞(5)縁語:その1
渡部泰明(東京大学名誉教授/国文学研究資料館館長)
今回紹介する和歌のレトリックは、百人一首に多く使われている「縁語」である。縁語とは、文脈を超えて複数の言葉に関係を持たせる技巧だが、そのうちのある言葉が掛詞として使われるケースが多い。それゆえ、凝りに凝った表現となるため、その言葉の意味がさらに強調されるということだ。つまり、縁語は掛詞と同じく、相手への気持ち、心を丁寧に届けるための手法なのである。(全12話中第9話)
時間:11分21秒
収録日:2019年6月17日
追加日:2020年1月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●文脈を超えて言葉が関係を持つ縁語


 古典和歌における縁語というレトリックについてお話しします。

 縁語とは、縁のある言葉ということです。言葉というのは何かしら縁があるといえばあるわけですが、ちょっとお気をつけください。単に関係があるというだけではありません。和歌の中で1つの言葉と別の言葉が文脈を超えて関係を持っている言葉のことを縁語というのです。

 和歌は57577と短いわけですから、その中で任意の2つの言葉をとれば、必ず関係があるといってもいいでしょうし、無関係な言葉同士などというのは使いようがありません。ここで説明するのはそういうことではなく、文脈を超えて言葉だけの関係を持ってしまうということで、そういう関係のことを指して「縁語」というわけです。

 その場合に、片一方が掛詞になっているということが大変多いのです。つまり、AとB、この2つの言葉があるとすれば、Bが掛詞でBとB´という2つの意味を持つ。そして、AとBは文脈の中で関係を持っており、必ず意味のつながりがあります。ですが、そうではなく、AとB´は文脈上関係がないのですが、そのB´のほうとAが関係を持つ。これを縁語と考えてもらっていいと思います。

 その縁語を考えるのに、百人一首を例にお話ししたいと思います。実は、百人一首には縁語は大変多いのです。これには何か訳があるのではとずっと昔から考えていて、まだきれいな結論は出ないのですが、多分晩年の藤原定家が縁語に大変興味を持ったからではないか、縁語を大事にしたからではないか、と私は考えています。


●「難波潟」の歌が伊勢の作とされるわけ


 それでは1つ目、百人一首19番で伊勢の歌ですね。

「難波潟
みじかき葦(あし)の ふしのまも
逢はでこの世を 過ぐしてよとや」

 難波潟は大阪湾のことですね。そこには葦がいっぱい生えている。葦というのは節(ふし)があり、その節と節の間が短い。そのため、「ふしのま」という言葉が「短い」という意味になるのです。

 ですからここでは、「難波潟の短い葦の節の間」ということで、「そんな葦の節の間のように短い間、短時間」ということですね。「でも、会わないでこの世をお過ごしなさい、と言うのですか」という意味です。「ほんのちょっとの時間も私と会ってくださらない、そんな人生を私に送りなさいと、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か
江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事
與那覇潤
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
編集部ラジオ2026(28)自由喪失の危機に考えるハイエク-1
斎藤幸平氏に物申す…自由喪失の危機に読みたい自由主義の近現代史
テンミニッツ・アカデミー編集部
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(1)率先し陣頭指揮する
徳川家康の「天下泰平」デザインとは?…陣頭指揮とカリスマ性
片山杜秀
生成AI「Round 2」への向き合い方(8)「責任あるAI」への課題と覚悟
責任あるAI――マイクロソフトが掲げるコンセプトと覚悟
渡辺宣彦
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介